経営の強い味方⁉それとも・・・歯科コンサルの実態とは?

近年、歯科医院の経営をとりまく環境は日々進化し続け、厳しさを増しています。変化の激しい現代において、コンサルを依頼することは歯科医院が持続的に成長するための有効な手段の一つとなっています。

本記事では、歯科医院におけるコンサルティングの種類や、コンサル内容、費用をまとめてご紹介します。

歯科医院を取り巻く外部環境
歯科医院の経営環境は厳しさを増しています。

その結果として、厚生労働省が提供する歯科診療所の廃止数のデータによると最新の2023年データでは、歯科医院の廃止数は2,037件であり、史上最高を記録しました。


図.歯科診療所の開設数と廃止数の推移(「医療施設動態調査(令和6年12月末概数)」(厚生労働省)より船井総合研究所作成)

これは2023年にはコロナ禍において、多くの医療機関が経営を維持するために受けた、いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済が開始しましたが、返済が重荷となり、経営を圧迫するケースや、政府が推進するマイナ保険証への移行による医療機関対応をなどの、原因が考えられます。特にオンライン資格確認システムの導入や、それに伴う院内システムの変更など、多岐にわたるデジタル化への対応には、初期投資や変更するための労働コストが伴います。

また、2年に1度改定される診療報酬の改定にも対応が求められ、2024年の改定では「口腔機能管理体制強化加算」の導入や、「ベースアップ強化加算1・2」など売上を大きく左右する変更や、賃上げへの対応を迫られる変更がなされました。

日々の診療の合間を縫って歯科医院の経営をしなければならない歯科医院の経営者にとって、これらの大きな変化に対して対応していくことは、難を極めているのが現状です。

コンサルティングを依頼する歯科医院も

前述のような厳しい経営環境の中、多くの歯科医院の経営者が一人での解決策を模索する中で、経営コンサルティングを依頼する歯科医院も数多く存在します。

変化の激しい現代において、コンサルを依頼することは歯科医院が持続的に成長するための有効な手段の一つとなっています。

歯科医院のコンサルとは

経営課題の洗い出しから戦略立案、業務改善、システム導入まで幅広くサポートします。集患、採用・教育、組織マネジメント、自費診療アップ、物販強化、移転・開業、事業承継など、経営全般にわたる課題解決と改善を支援する役割を担います。

経営戦略の策定においては、市場分析や競合調査に基づき、歯科医院の強みを活かした独自の方向性を示すことで、持続的な成長を支援します。

また集患対策では、院長が手が回らない、マーケティング戦略の立案・実行を通じて、新患獲得をサポートします。

人材育成においては、採用戦略の構築から、スタッフのスキルアップ研修、モチベーション向上策などを提供し、組織全体のパフォーマンス向上に貢献します。

さらに、業務効率化の視点からは、予約システムの導入や診療フローの見直し、最新技術の活用などを提案し、生産性の向上を図ります。財務分析に基づいた経営改善提案や、法規制、医療安全に関するアドバイスも重要な役割です。

このように、歯科医院コンサルタントは、経営者の視点に立ちながらも、専門的な知識と客観的な分析に基づき、歯科医院の発展を総合的にサポートする役割を担っています。

先述の通り、厳しさが増す歯科医院の環境において、歯科コンサルタントは、状況に対応するための重要なパートナーとして選ばれています。

歯科医院のコンサルは何ができるのか?

医業収入をあげるコンサルティング

コンサルを依頼しようと思う、分かりやすい理由の一つが「売上を上げたい」という内容です。ここでは、売り上げを上げるコンサルティングについて「保険」と「自費」に分けてお伝えします。

多くの歯科医院において一番の売上の基本となるのが保険売上になります。
歯科医院の業績向上において患者数を増やすことがまずは重要です。その中で患者をより効率的に見るための診療フローの策定や、患者数を増やすための増患施策が求められていきます。保険医業収入を上げていくためには、診療報酬改定への適応も欠かせません。改定の内容がどのように変化しているのか、その改定に対して、院内のフローをどのように変更する必要があるのか決めていくことで保険医業収入を上げていくことができます。


表.1人あたり平均う蝕(DMF)歯数(「平成28年歯科疾患実態調査 」(厚生労働省)より船井総合研究所作成)

また上記のDMFT歯数を見ると20歳から24歳までのDMFT歯数が1987年の12.01本から4.06本と約1/3になっています。
つまり、治療すべき歯の数が減少しており、いままでのように治療を多く実施していくことが売上にはつながりづらくなっているということです。
2016年の診療報酬改定では従来の削る治療ではなく、予防を目的とした「歯周病安定期治療(SPT)」が診療項目として追加され、さらに「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」「口腔機能管理体制強化加算(口管強)」といった、予防体制が整った医療機関に対する加算が追加されるなど、国の改定の意向としても予防を強化していく方向であることから「治療」から「予防」に軸足を移し、予防体制を強化することで売上が強化されます。

このような診療体制の構築や、予防体制の構築・強化という部分を歯科コンサルは実施して保険の医業収入の増加施策を実施します。

しかしそれだけではありません。
保険診療では単価が決まっており、受け入れられる患者数によって売上の上限が決まってしまうため、自費診療への注力が不可欠となっています。

歯科における自費治療には、インプラントやマウスピース矯正、ワイヤー矯正、小児矯正、そして自費の補綴治療などがあり、それぞれの治療で単価も大きく異なります。これらの自費治療をどのように価格設定し、患者さんに選んでもらうのかをサポートするのがコンサルタントの仕事です。コンサルタントは、医院の現状や地域特性を分析し、競合との差別化を図りながら、患者様にとって魅力的で納得感のある価格設計を提案します。

さらに、自費主訴の患者さんを効果的に集患することで、自費売上をさらに伸ばしていくことができます。これは、看板やチラシといったオフラインのマーケティング施策や、HPやWEB広告といったオンラインのマーケティング施策をくみあわせることによって実現が可能です。これらの戦略立案から、時に実際に広告の運用までサポートすることで、業績アップを実現しています。

採用コンサルティング

歯科医院では、歯科医師や歯科衛生士、歯科技工士、時に保育士や管理栄養士といった資格者や、歯科助手、受付、クリーンスタッフといった多くのスタッフの採用が必要になってきます。資格者の採用は、限られた資格者を多くの競合歯科医院との間での奪い合いとなり、全国的に新卒の給与条件が年々引き上げられる傾向にあります。
また、都心では歯科助手についても、採用難な状況にあります。周辺にさらに給与条件のいい一般企業があることで、採用が難しいケースが多いです。
そんな中で採用コンサルティングでは、必要な採用数に対して、医院の状態から、他院と比べて自院が何を強みとして求人していくべきか確認をして、魅力発信をどのようにすべきかを決めて、実施をしていきます。具体的には、採用のペルソナの設定から、ペルソナに合わせた求人文の作成、求人画像の作成、スカウトメールの作成などを実施します。
また時に周辺歯科医院の競合調査の結果として、給与条件の見直しを実施します。

採用は業界的な特性が大きく関わる部分です。歯科を専門としているコンサルティング会社に頼むことで、他の医院でうまく採用できた事例・情報が手に入り、提案を実行していくことが、採用成功への近道です。

他にはどんなコンサルティングがあるの?

歯科のコンサルティング内容としては、他には教育・研修系のコンサルティング、カウンセリングのコンサルティング、評価制度のコンサルティング、開業のコンサルティング、保険算定のコンサルティング、税務のコンサルティングなど様々あります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください
→「歯科コンサルティングの種類とは?」

歯科コンサルのメリット・デメリットは?

歯科コンサルを頼むことは、メリットがあると同時にデメリットがあるのも事実です。
重要なことは、デメリットをしっかりと理解した上で依頼をすることです。

歯科コンサルのメリット

歯科のコンサルティングを受ける際に得られるメリットは大きく5点です。
・自分だけでやった場合に比べて、短期間で成果を上げることができる。
・トライ&エラーの回数を最小限に抑えて成果を上げることができる。
・自分では思いつかない・知らない方法を提案してもらうことで、自分の想定よりも大きく成果を上げることができる。
・経営にかかるリソースを減らすことで、診療に専念することができる。
・特に業績アップのコンサルティングでは成果を上げることで、自身の収入や、スタッフの収入を増やすことができる。
上記のように、一人では達成できない事や、自分では解決できない課題を比較的短期間で達成・解決でき、その後、さらに自分では創造もできないことを実施するのがコンサルティングのメリットと言えます。

歯科コンサルのデメリット

歯科のコンサルティングを受ける上でのデメリットがあるのも事実です。
・コンサルティングは費用が高い
・広告費などさらに別の費用がかかるケースがある。
・成果を保証しないものが多い
・宿題が多い
・コンサル会社によって、得意不得意があり、持っているノウハウに偏りがある。

まとめ

本記事では、歯科医院の経営を取り巻く厳しい環境に触れながら、歯科コンサルティングの種類、具体的な内容、そしてコンサルタントができることについて詳しく解説しました。

近年、歯科医院の廃止件数は過去最高を記録し、コロナ禍での融資返済開始やマイナ保険証への対応、そして診療報酬改定など、経営者が直面する課題は多岐にわたります。日々の診療に加え、これらの変化に対応することは極めて困難です。

そのような状況下で、経営のプロであるコンサルタントを依頼することは、歯科医院が持続的に成長するための有効な手段です。コンサルタントは、集患・採用戦略、自費診療の強化、業務効率化、さらには保険収入の増加策まで、多角的な視点から経営をサポートします。特に、自費診療においては、単価設定から集患戦略まで一貫して支援し、売上向上に貢献します。

もちろん、コンサルティングには費用といったデメリットも存在しますが、それらを上回るメリットとして、短期間での成果達成や、これまでにない視点からの経営改善、そして院長先生のリソースを診療に集中できる点が挙げられます。

歯科医院の経営は、外部環境の変化に柔軟に対応し、常に進化していく必要があります。その中で、専門知識を持つコンサルタントの力を借りることは、激しい競争を勝ち抜き、安定した経営基盤を築くための重要な選択肢となるでしょう。

船井総合研究所では、無料で経営相談を受け付けています。経営にお悩みの歯科医院様は、ぜひお気軽にご相談ください。