歯科業界における歯科医師としての働き方・キャリアについて


 
昨今の業界動向として、歯科医師一人ひとりが自身のキャリア形成を考えていくうえで、臨床的な観点だけではなく経営についても学ぶ意欲が高まっていると感じています。
これは弊社が主催する経営セミナーに参加する勤務医が増えてきていることや、歯科医院経営をする経営者のもとで学術的・臨床技術だけではなくマーケティングやマネジメントを学んでいる姿が見えるためです。
以前までだと、歯科医師のキャリア形成を思い浮かべる際に、大きなターニングポイントになるのが開業であり、その先には分院展開する等といった拡大志向での経営ビジョンが単一的にあったと思います。
しかし、現代では歯科医院経営者のもとで永く勤務し、雇用をされながらも分院長などの管理職や限定的な範囲での経営を任されるキャリアから自身での開業まで、多様性のあるキャリア形成が見られます。
お問合せ頂く相談内容や、コンサルティングニーズもマーケティングニーズだけではなく、マネジメントニーズはもちろんのこと、法人の幹部育成といった多角的な内容へ広がりをみせているとも言えます。
このような背景から、比較的若い歯科医師からニーズのある、開業に伴う準備やビジョン経営など全般的な内容に触れていきたいと思います。

高収入の歯科医師として働く方法について

歯科勤務医として実績をあげて収入を上げる働き方について

先ずは歯科医師として、経営者や勤務医といった働き方を問わずに実績と収入をあげていく働き方ですが、これは生産性の向上というのが大前提と言えます。
歯科医師として働くうえでは歯科医院や歯科診療所という場所ありきであるわけで、開業した経営者であっても勤務医であっても共通です。
これは、歯科医院や歯科診療所という店舗を維持管理するコストが発生することを意味し、歯科医師としてあげる売上全てが収入にならないということです。
特例を除き、土地や建物といった固定費だけではなく流動費を含む諸経費を差し引くと、売上の約20%程度しか収入にはなりえません。
雇われている立場だと勘違いしやすいですが、これは人手や売上を生む労働集約型と言われる業態の前提となる事実です。
勤務医の立場で実践するとなると、診療時間という限られた環境で多くの患者を診療し保険点数を高く稼ぎ出すこと、単価を上げていくために自費診療の比率を高めていくことが求められるでしょう。
これはあくまで、時間に対する売上額を高めていくことで、生産性という観点で歯科医師としての価値を高めていくことが収入増に直結すると言えます。

歯科医院開業により高収入を得る働き方について

自分で開業し経営者となって収入を高めていくことも、勤務医と同様ですが従業員を抱える雇用主という立場が加わることが大きな違いです。
歯科医院や歯科診療所やクリニックと名称は様々ですが、歯科という業種としては共通で、医院経営を効率よく行っていくことが収入増となります。
医院経営をするうえでは、全てのお金の流れを把握しなければなりません。
売上の内、固定費や流動費を差し引き残った金額が全て収入ともいえます。
しかし、開業するにあたって借り入れをしていれば返済がありますし、設備に投資をするために使わずに残しておかねばならないかもしれません。
開業し経営者となると一気に収入が増えると思われがちですが、永続的な経営をしていくために必要なお金と自身としての収入とは分けて考えねばなりませんので、歯科医院としての売上を向上させ成長拡大させていくことが収入増に直結すると言えます。
また、人手不足が叫ばれている昨今、歯科業界でも過去最大の人財難となっています。
これは今後も継続的な悩みとなると捉えるべきで、特に歯科衛生士を中心としたスタッフ採用には苦労するでしょう。
医院経営において、マーケティング施策を実践し生産性を向上させていき経営規模の拡大を図るうえでは、運営に伴うスタッフは人数が多くなってまいります。
スタッフ採用という観点は大変重要であり、集患におけるマーケティング戦略が発達する現代の医院経営においては、スタッフ採用に思わぬ落とし穴があることも珍しくないと言えます。

地域でより愛される歯科医院を作る方法について

勤務としても経営者としても、歯科医院として患者に多く来院してもらえないことには、永続的な診療はもちろん、業績拡大も見込めません。
外来診療にしても訪問診療にしても、店舗を構えている以上は、その地域に根差し支持される医院創りをしていく必要があります。

歯科医院の開業手順について

開業に伴う手順は、最低限な事項でいうと開業地の選定と資金の借り入れ、そして医院建屋の建設や設備調達と運営に必要な従業員の採用です。
経営資源と言われる人・物・金が揃うことで歯科診療所・クリニック経営をスタートさせることができます。

歯科医院の開業にかかる経営資金の目安について

資金の目安はそれぞれですが、借地にて経営する前提ですと約6,000万円から1憶円と言われています。
細かなルールはありませんので、人と物が揃うまでにかかる費用と当面の運転資金という内訳になるでしょう。
診療スタイルに問わず、多くの患者に来院していただかないことには黒字経営を実現できませんので、集患に伴うマーケティングにさく費用も当面の運転資金として計算しておくのが、時流にあった歯科医院経営と言えます。

医療法に基づいた歯科医院の広告・DMの出し方について

医療機関である以上、広告の規制はしっかりとチェックし法律に則った方法や内容にする必要があります。
開業に伴う申請や施設基準は前提ですが、広告としてのルールは事前に確認しておくことが得に重要です。
医療機関としては自費診療に関する内容は明記する際に料金を載せなければならない事や諸条件を明記することはもちろんですし、web上に有料広告を出す際にはGoogleやYahoo!といった検索エンジンが求める基準で運用しなければなりません。
ルールは常に変化します。過去どうであったかではなく、今の基準はどんな内容か継続的に理解しておくか、専門家の支援を受けていくことを推奨します。
また、考慮しなければならないのが、開業地の歯科医師会のしくローカルルールです。
原則全ての歯科医院が歯科医師会に加盟し、診療所・クリニック経営を行っていくと思いますが、そこでの広告ルールが存在すると聞きます。
各地でのルールは一概ではなく、時代に沿って変化するものでしょうから、則っていくこともまた、時流と言えるのではないでしょうか。

地域に愛されるためのコミュニケーション・場作りについて

保険医療機関として制度に則った診療をすることはもちろん、地域で愛されるということは共感されファンを増やすことと同義でファンマーケティングと呼ばれる手法を実践していかねばなりません。
医療機関として共感されるコミュニケーションが取れる医院創りをするため、多くの医院ではカウンセリング等の手法を取り入れるわけですが、本質的にはファンを作るため、多くの満足度を得られる医院創りが要となります。
満足度を科学すると、先ずは期待値を高めてその期待値を超えるサービスを提供するということになります。
歯科診療でいうと、患者の想像内である保険診療ではなく、高い期待をもって自費診療を選択頂き、その期待を超える治療を提供し満足してもらうことと言えます。
矯正歯科や口腔外科を医院名称に表明する歯科医院も増えてきているが、患者は既に医院名をそのまま真に受けて受診するとは限らず、臨床的な研鑽とともに医院サイトや診療科目に特化したサイトで特長や取り組み方についての情報発信を絶やさずにしなければならないでしょう。

歯科医業を始める際に注意したい法律とその罰則

保険医療機関としても、完全自費診療にしても、国が定める法律に則らなければなりません。
勤務医であっても法律に違反した診療を続けた場合、保険医としての資格をはく奪されますので、立場はどうあれ順守しなければなりません。
しかし、経営者となると従業員の法定順守も立派な責任となります。
保険医療機関として法律に則っているかを審査し、抑止力が働くように新規指導などが存在しますので、しかるべき是正は受けられるような制度になっています。

歯科医師の資格で可能な医療行為の範囲についてとその罰則

診療行為に対する可否は既に理解いただいているうえですが、最も注意しなければならないのが保険診療と自費診療の境界線といえます。
年齢を問わず、毎月多くの歯科医師が集団指導や個別指導に呼ばれている現実をみると、保険制度の理解が一部浅いように思います。
そして、多く場合は専門的な診療科目ではなく、一般診療の範囲で指導を受けレセプトの審査が通らないと聞きますので、2年に1度の大型制度改正だけではなく基本事項の定期的な振り返りが必要でしょう。
民間の審査補助サービスを受ける企業も多く存在します。
知識のアップデートと共に保険制度に則った診療行為であることの確認の意味も込めて、サービスを受けることも必要かもしれません。

歯科衛生士の資格で可能な医療行為の範囲についてとその罰則

歯科医師と同様に歯科衛生士にも定められた処置可能範囲が存在します。
この範囲を超えて処置を指示することは経営者としての責任が問われるので、従業員の管理のもとに正しく理解しておく必要があります。

歯科医師法に基づいた歯科医院経営の重要性についてとその罰則

くどくも、法定順守は歯科医院経営において大前提となりますが、これは責任というだけではなくファンマーケティングとしても必要なことといえます。
歯科医師の皆さんが思っている以上に、患者は患者同士繋がっています。
この医院でどんな処置をされたか。
どの職種の従業員にされたか等、想像以上に話は広がります。
上記で触れた指導を受けるキッカケとなる事項に、通報も少なくないと聞きます。
通報とは競合にあたる歯科医院がしてくるものではなく、患者が行うのです。
現在はインターネットの発達により、専門知識も少し調べるだけで知ることができます。
疑義があれば管轄する組織へすぐに通報されることもあります。
しかし、リスクと捉えるよりは、まっとうな診療を求められているというのが正しい理解ですので、不明な点は都度調べて情報をアップデートしていってほしいと思います。
以上、「長期的に収益をあげる、歯科医院経営のノウハウ」について、広いポイントで執筆させていただきました。
ご質問やご不明点があります場合は、お問い合わせください。

医療・介護向けM&A

×

医療・介護向けM&A

×