歯科コンサルティングの種類とは?
日頃耳にすることが多い「○○コンサル」という職業ですが、コンサルという言葉が頻繁にされるようになった今、実際コンサルティングサービスやコンサルタントはなにをしてくれるのでしょうか。
近年では、歯科業界にも様々なコンサルティング会社も増えていき、様々なコンサルティングの形態・種類が存在しています。本記事では、歯科業界にあるコンサルティングの種類について解説していきます。
歯科コンサルティングの種類とは?
「厳しくなる歯科医院経営」
ではなぜ、歯科医院経営をサポートするコンサルティングサービスが年々増えているのでしょうか。それは、歯科業界の経営環境が年々厳しくなっているという事実があるためです。実際、かつてコンビニの数よりも多いと言われた歯科診療所の数は2018年をピークに減少傾向にあります。これは、歯科医院の開設数は減少傾向にある中で、歯科医院の廃業数は2025年には1990年の計測以降初めて2000件を超え、過去最高となりました。

図.歯科診療所の開設数と廃止数の推移(「医療施設動態調査(令和6年12月末概数)」(厚生労働省)より船井総合研究所作成)
また、歯科医院経営で売上を上げるにあたって必須となるヒトの確保も難しくなっています。全国の新卒歯科衛生士の有効求人倍率は2022年時点でおよそ23倍にもなり、一人の新卒歯科衛生士を23院で取り合っている状況です。「採用ができない」今の状況に心当たりのある歯科医院経営者の方も多いのではないでしょか。

図.新卒歯科衛生士求人倍率の推移「歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告」(一般財団法人口腔保健協会)より船井総合研究所作成)
そこで、歯科医院経営者をサポートするために増加しているのがコンサルティング会社です。歯科医院経営のコンサルティングの種類はどのようなものがあるのでしょうか。
歯科医院経営のコンサルティングの種類
・マーケティング
コンサルティングの依頼を検討されている先生から一番いただくご要望が「売上を上げたい」という声になります。そこで、コンサルタントが院内外のマーケティングのサポートをすることで売上をあげるのがマーケティングコンサルティングになります。
・採用
詳しくはこちらの記事をご覧ください
→「経営の強い味方⁉それとも・・・歯科コンサルの実態とは?」
・M&A
今では大型法人の拡大戦略に欠かせない戦略の一つにM&Aがあります。ただ、M&Aを行う際には、専門的な知識や経験が必要となるため、「買う側」「買われる側」どちらも仲介会社やコンサルティング会社との連携が必須になります。具体的にはビジネスデューデリジェンスと呼ばれる事前調査を行ったり、交渉や契約書の作成などを行います。
・財務
財務データの分析を行い、収益やコストの管理、財務戦略のアドバイスを行います。内容としては税理士さんと近い要素もあるコンサルティングです。
・事業承継
日本の中小企業の〇%は後継者不足での倒産が起きています。これは歯科医院も例外ではなく、後継者がいないため廃業となっている歯科医院も多いのです。そこで、親族に限らず勤務医への事業承継も含めてサポートするコンサルティングも行っているのが事業承継のコンサルティングです。
・組織化&マネジメント
院長だけではなく、スタッフも巻き込んで運営していくのが歯科医院経営です。そのため、歯科医院の売上を伸ばすためには組織化やマネジメントの要素が必要不可欠になります。評価制度の構築やスタッフへのミーティングも含めて医院内の施策浸透スピードを高めていくのが「組織化&マネジメント」分野のコンサルティングになります。
・教育&研修
新人スタッフへの研修/幹部スタッフの育成など、歯科医院のスタッフが活躍し、医院への貢献ができるように伝えていくのが「教育&研修」分野のコンサルティングになります。
・開業
開業前にご相談いただき、立地選定から内観、導線までサポートするのが開業コンサルティングです。「差別化の8要素」でも一番重要だとされている”立地”の部分からサポートできるため、開業後の業績への不安も小さい状態で開業をすることが可能になります。
・保険算定
保険算定は、歯科医院の収益に直結するため、正確かつ効率的な算定が求められますが、院長含め正確に把握している人が少ないのもこの療育です。そのため、このコンサルティングでは、診療報酬制度や各種加算の知識を基に、歯科医院が正当な報酬を受け取れるようにサポートを行います。
上記でご紹介したようにひとえにコンサルティングといっても、歯科医院経営の内のどの分野をサポートするのかは会社によっても変わってきます。総合的にサポートしてくれる会社なのか、局所的に深くサポートしてくれる会社なのかは事前に把握しておきましょう。
事務長代行とは何が違う?
また、コンサルティングとは少し異なりますが、事務長代行を使用されている歯科医院も多いのではないでしょうか。事務長代行とは、日々診療と経営で忙しい院長のために、求人の掲載やポスターの作成などを代行してくれるサービスのことです。
事務長代行とコンサルティングとの違いは、「医院経営の戦略を立てるか・立てないか」の違いです。コンサルタントの主な仕事は「各コンサルティングの分野に則しながら医院の中長期的な戦略を立て、それを実行まで移すサポートを行うこと」ですが、事務長代行は「院長が立てた戦略の中で、手を動かし実行のサポートを行うこと」が仕事になります。
つまり、
・戦略を一緒に立てて実行サポートをしてほしい経営者→コンサルティング
・実行のサポートをしてほしい経営者→事務長代行
に依頼することが多くあります。スピード感を持って医院を拡大していきたい場合にはコンサルティングと事務長代行を併用することで施策の立案と実行のスピードがさらに速くなっていきます。
まとめ
歯科医院経営は年々厳しさを増し、特にヒトの確保など経営環境の変化に直面しているため、経営者に対して経営サポートを行うコンサルティングサービスがますます重要になってきています。歯科医院向けのコンサルティングの種類には、マーケティング、採用、M&A、財務、事業承継、組織化&マネジメント、教育&研修、開業支援、保険算定など、多岐にわたる種類があり、クライアント歯科医院の状況に応じてサポート内容は異なります。
歯科医院経営者がコンサルタントを選ぶ際は、どの分野を強化したいのか、どのようなサポートが必要なのかを明確にし、総合的にサポートができる会社なのか、特定分野に特化した会社かを見極めることが重要です。医院の状況や目指す方向性に応じて、適切なコンサルティングサービスを活用し、経営強化を行うことが求められています。