【2025年最新版】経営難が増加?歯科経営と歯科開業の実態とは
歯科の経営は難しい?歯科医院を取り巻く経営環境とは
メディアでも聞く通り、「歯科医院の数はコンビニの数よりも多い」と言われる通り、歯科業界は競合数が多く、歯科医院経営の観点から見ると非常に競争が多いイメージがあるのではないでしょうか?
実際に、歯科医院を取り巻く経営環境は厳しい状況にあると言えます。
本記事では2025年の現時点における、最新の業界データ・歯科医院の開業医の実態・歯科医院経営におけるよくある失敗について知っていただき、歯科業界の実態とその傾向について解説します。
「歯科診療所の推移」
【2025年最新版】歯科診療所数の推移

図.歯科診療所数の推移(「医療施設動態調査(令和7年2月末概数)」(厚生労働省)より船井総合研究所作成)
歯科診療所数は2016年の68318件をピークとして、歯科診療所の数は徐々に減少傾向にあります。歯科医院はコンビニよりも多いと言われる通り、歯科業界は事業者数の多い業界の一つです。そのため、経営面から競争が激化しやすく、2016年以降は緩やかに微減傾向にあります。直近の最新のデータでは、2025年の歯科診療所数は65,957件となっています。
「歯科診療所の開設と廃止」
【2025年最新版】歯科診療所の開設数・廃止数の推移

図.歯科診療所の開設数と廃止数の推移(「医療施設動態調査(令和7年2月末概数)」(厚生労働省)より船井総合研究所作成)
歯科診療所の開業数は年々減少しており、2020年の時点において開業数を廃業数が上回るケースが発生しました。また、最新のデータでは開業数は1,454件となっており、歯科業界の近年の傾向としては開業は減少しつつも、廃業は横這いから上昇傾向に移りつつあると言えます。
「医療法人と個人事業主」
【2025年最新版】医療法人数と個人事業主の推移

図.個人事業主と医療法人の歯科診療所数の推移(「令和4年医療施設(動態)調査 全国編、第5表(報告書第5表) 歯科診療所数,年次・開設者別」(e-Stat 政府統計の総合窓口)より船井総合研究所作成)
歯科業界における個人事業主数は2024年に48,361件となり、減少傾向にあります。一方で医療法人数は17,124件増加傾向にあります。ここから見える構造として、歯科業界では医院規模の小さい個人事業主の数は年々減少し、比較的規模感を大きく構える医療法人数は増加傾向にあるという二極化構造が加速しつつあります。
実際に歯科医院の年間の平均売上は4,575万円であり、この平均値は大型の医療法人が引き上げているものでもあります。そのため、実態としては平均を下回る歯科医院の数の方が多くあります。
結果として、日本全国の歯科医院の中でも経営に苦難する医院が増えている事が実態としてあります。特に、経営難に陥る医院にあげられる共通のテーマとしてこれらの4つの事があげられます。
1.人口減少による集患難
2.人口減少による採用難
3.資源材料費高騰による材料費の上昇
4.大型法人の増加による競合環境の激化
以上の事柄から、歯科医院における経営環境は非常に厳しい状況が続いていくといえます。
そもそも歯科医院の開業の実態はどういった状況にあるのか?
「歯科医院を開業するタイミング」
まず、歯科医院を開業するタイミングについてお話します。
歯科医師が開業するおおよその年齢についてですが、最も多いボリュームゾーンは30代〜40代になります。特に、30歳半ばから40歳半ばにかけて開業をする歯科医師は多くいます。実際に20代で開業をする歯科医師も存在はしますが、実際の数字を見ていくと非常に稀なケースと言えます。
また、開業の適正年齢は何歳なのか?と考える方も多くいると思いますが、
これらの事は自身の体力・診療実績・診療技術・経営スキルなど、多面的に考慮したうえで考えていくことがおすすめです。
「開業医の年収はどのくらい?」
歯科医師の多くは勤務医からキャリアをスタートし、その後、開業医となることで年収というものが大きく変化するタイミングが訪れます。
一般的な歯科医師の年収は800万円程度を推移していますが、開業医ともなると年収の幅が大きく広がります。そのため、平均値と言われているようなデータは中央値と乖離しており、実際には800万円を下回る開業医も存在します。
「歯科医院の開業資金はどのくらい?」
歯科医院の開業資金の金額は年々大きく増加していっています。
2010年代においては5000万~7000万程度の開業資金で開業されるケースも多くありましたが、2020年以降は材料費や資源費用などの物価が大幅上昇したため、従来の1.5倍から2倍程度の開業資金で開業されるケースが増えてまいりました。
実際に、1億円程度の資金を要するケースも増えており、計画的な開業準備と初期段階から経営能力や運営能力を身に着けておかないと、キャッシュフローの圧迫や借入返済の難航といった非常に厳しい開業ケースにつながってしまう恐れもあります。
「歯科医院の開業を失敗させないために」
歯科医院の開業をこれから考えているような方は、失敗させないための情報を正しく知っておくことが重要です。詳細の記事もまとめていますのでそちらをご確認ください。
歯科医院経営で失敗する人の特徴?
これまで多くの歯科業界に関する情報や開業に関する情報を上げてきました。
そこで、実際に歯科医院経営を行っている開業医のケースにおいて、どのような失敗事例が多くあるのか?それらの失敗に共通する特徴は何か?をお話します。
歯科医院経営で失敗するケースの特徴は4つ存在します。
また、実際の特徴と起きている現象についても箇条書きでまとめています。
特徴①ヒト視点:人の成長を軸に置いた組織運営ができていない
採用にかけるコストが安すぎる。(賃金や待遇から募集に至るまで)
教育カリキュラムや研修トレーニング制度がない。
仕事のやり方や手順を教える時間をとっていない。
マネジメントスキルが欠如しており、スタッフが離職する。
特徴②モノ視点:スタッフや患者さんが満足する設備を整えていない
衛生・滅菌などを行う体制が不十分。
業務を行う上でアナログ要素が多く作業が煩雑。
特徴③カネ:適切なお金の使い方ができていない
借入返済が難航するほどの資金を借りている。
売上や利益の大半を院長報酬で獲得し、事業投資の金額が小さい。
広告宣伝費や人件費といった、売上増加につながる経費を使えていない。
特徴④情報:定期的な情報収集、患者向けの情報発信を行っている
インプット:セミナー、学会など
アウトプット:HP、SNSなど
失敗しないために大事なことは適切な情報収集
歯科医院の経営にまつわる様々な情報はクローズドな状態であることが現状です。
また、二次情報や三次情報では信憑性がなく、誤った情報では事業の失敗リスクが増大してしまいます。だからこそ、歯科医院の経営において失敗しないためにはご自身で足を運んで正しい情報を入手することが重要と言えます。
また、情報は常にアップデートしていかないと環境の変化についていけなくなります。
一般的に歯科経営に関する情報を集めていく場合は、おおよそ2つの手段が有効です。
①歯科医院経営者向けのセミナー
歯科医院経営向けのセミナーは多く存在し、そのテーマも多岐にわたっています。
集患・リピート・採用・定着など、実際に自身の気になるテーマから情報を収集することが可能です。実際に歯科医院の経営セミナーを受講する場合は、以下の点に気を付けることが大切です。
「視聴方式のメリットとデメリット」
セミナーの形式についてはオンライン型のセミナーも増えており、気軽に情報を収集できることなどもメリットとして挙げられます。デメリットとしてはオンライン型のセミナーでは視聴環境や受講態度次第で情報収集の質が低くなることがあげられます。
一方で現地開催型のセミナーの場合は、デメリットとして移動費や時間のコストは発生しますが、実際の講師と直接コミュニケーションを取れたり、質疑応答などを行えることもあり、正確な一次情報を多く収集できる点がメリットです。
「有料セミナーと無料セミナーメリットとデメリット」
セミナーの費用においては大きく有料と無料の2種類に分類されます。
有料セミナーのメリットは、セミナー講師のレベルが高い・公開する情報やノウハウの質が高い・本来クローズドにされている情報収集ができるなどがあげられます。
デメリットは費用が一定以上発生する点です。
無料セミナーのメリットは、セミナーの費用が発生しない点です。
一方でデメリットは、セミナーの情報の質が担保されない・参加者が多いため多くの人が知った情報であるという点があげられます。
②コンサルタントなどの専門家への相談
歯科医院の経営においては、専門家のコンサルタントに相談する方法も存在します。その場合はコンサルティング会社の規模や上場の有無などを確認し、正しい情報アドバイスを行っている専門家を見つけることがポイントです。
まとめ
ここまで本記事をお読みいただきありがとうございました。
経営環境が大きく変化してきている歯科業界においては、今後まずます競合状況が苛烈化していくことが想定されます。本記事の情報を活用していただくことで、関係者の方々の少しのお役になれば幸いです。