歯科医師の平均年収はいくら?開業を成功させ年収を上げるためのポイントも解説

「将来、開業して自分の歯科医院を持ちたい」と考えたことはありますか?
「開業医は儲かる」「開業医は意外ともらえない」などなどそんな意図が裏にはあるかと思います。歯科医師の平均年収は810万円と、日本の平均年収を大きく上回りますが、その内訳は働き方によって大きく異なります。勤務医であれば平均年収は約700万円、一方で開業医は800万円ほどが大半です。
「開業すれば年収1,400万円も夢じゃない」と考える方もいるかもしれませんが、それは一部の成功事例に過ぎません。競争が激化し、開業資金も高騰する現代において、何も知らずに開業に踏み切るのは非常に危険です。開業医として成功するためには、リスクや課題を理解し、適切な準備を進めることが不可欠です。
そこでこのブログでは、歯科医師が開業で成功するためのポイントを、具体的な成功例・失敗例を交えながら解説していきます。

歯科医師の平均年収について

歯科医師の平均年収は810万円という結果となりました。この数値を細かく見ていくと、平均月収では62万円、平均賞与は63万円という結果でした。日本人の平均年収が460万円ということを考えると給与水準が高い職業であることは一目瞭然だと思います。しかしあくまで平均値のため、開業医か勤務医か、年代、性別、地域によっても大きく異なります。そのため歯科医師とひとくくりにしても、稼ぐことができる環境と、そうではない環境があることを知る必要があります。そのためここからは、「勤務医と開業医による年収の違い」「年齢、性別、地域による年収の違い」についてまとめていきます。

勤務医・開業医による年収の違い

・勤務歯科医師の場合
勤務歯科医師の平均年収は700万円ほどといわれています。もちろん勤務する場所や役職によっても年収が前後します。
・開業歯科医師の場合
開業歯科医師の平均年収は800万円ほどが大半です。開業をした場合、1,400万円の年収が見込めると考える人が多いですが、大半は800万円ほどの歯科医院が多くなります。もちろん歯科医院を開業し、成功し、大きな医療法人となれば1400万円の年収までもっていくことができます。

図.個人事業主と医療法人の歯科診療所数の推移(「令和4年医療施設(動態)調査 全国編、第5表(報告書第5表) 歯科診療所数,年次・開設者別」(e-Stat 政府統計の総合窓口)より船井総合研究所作成)

・競争が激しい歯科業界
現在、医療法人数は増加していますが、個人事業主数は減少しています。つまり大きく成功する医療法人が増加していく中で、小さな規模の歯科医院は廃業に追い込まれ、数が減少しています。そのような競争が激化する時流の中で個人の開業医が成功するのは難しくなっているのが現状です。

・年々上昇している開業資金
競争が激化する歯科業界において、開業当初から大型法人化を想定した設備投資をする医院も増えてきています。これまでは5000万円から7000万円が開業における資金の目安でした。しかし、開業当初から独自の強みを打ち出すためIteroやマイクロスコープなど自費特化の設備投資に力を入れ、9000万円から1億2000まで開業資金をかける医院が通常になりつつあります。

個人で開業したときの難しさ

個人で開業し、失敗したときケース例

チェア3台で歯科医院を開業し、年間で5400万円の業績を上げているケースを想定してみましょう。5400万円のうち20%が年収と考えられるため、約1000万の年収を得ることができます。そこから税金などが引かれるため、手取り800万円を手元に残すことができます。しかし考えるべきなのはこの先になります。開業資金の返済があるため、大体月々返済が40〜80万円かかります。これを年換算すると年間500万円の返済になります。つまり手取りとしては300万円になります。このように開業のやり方や方向性を見誤ると勤務医よりも手取りが少なく、経営において苦労する状況になります。

個人で開業し、成功したときのケース例

チェア4台で歯科医院を開業し、順調に経営を伸ばし、チェアを7台に増設、保険診療、自費診療共に伸ばすことができ、年間で2億1000万円の業績を上げているケースを想定してみましょう。2億1000万円の業績のうち20%を人件費とすると4200万円が人件費となります。チェアが7台だと勤務医が2人、歯科衛生士が5人、助手、受付を2人と想定すると3000万円ほどの人件費となり、院長としては約1200万円の年収となります。税金などを考慮しても手取りは900万円ほどになります。このように開業を成功させることは決して簡単ではないものの、適切な施策を行うことで高い年収を得ることができます。

歯科開業医として成功し年収を上げるための方法

これまで勤務歯科医師、開業歯科医師の年収についてみてきましたが、「開業」といっても様々な例があり、年収も多かったり、少なかったりと、様々なケースがあることが分かりました。そこでここからは開業を成功させるためにどのようなことに気を付け、開業準備、計画を進めるべきなのかについてまとめていきます

歯科医院を開業する上でのポイント:

立地選定の重要性

他の歯科医院と差別化をしていくうえで、最も重要なのが「立地」です。他に差別化できる要素としては、規模、ブランド、商品力、価格力、販促力、固定客化力の8つが存在しています。どれも大切な要素ですが、立地、規模、ブランドは戦略的差別化要素と呼ばれ、すぐには変えることができない要素になります。特に立地は開業以降、簡単に変えることができず、戦略をもって意図した立地を選ぶ必要があります。

立地は都心、郊外によってもいい場所の条件が異なります。都心で駅近くの商業ビルの場合、ターゲットは会社員やOLになりますが、郊外の住宅地の場合、ターゲットはファミリー層となります。
立地を選ぶ上で大切なのが商圏分析ツールを活用した商圏調査になります。人口統計、年齢層、所得層の分析をすることで、歯科医院を中心とした3㎞圏内や、15分で通える圏内においての傾向を掴むことができます。例えば高齢者が多く、高所得者が多い地域であればインプラントを強みとしたマーケティング施策が有効と予測ができ、ファミリー層が多い地域あれば小児歯科を強みとした医院づくりをしていくなどの数値に基づいた判断が可能になります。また競合医院の調査も忘れてはいけないポイントになります。人口当たり歯科医院数や世帯当たり歯科医院数、競合歯科医院のSEO/MEO状況、特徴、強み・弱みを調べておくことでその場所で開業した際に、予想したターゲット層を獲得できるのか予測を立て、適切な判断をすることができます。

適切な規模の設定

「規模」も大切な差別化の要素であり、一度決定するとのちの変更が大変な要素になります。一般的にはチェアは3から4台、テナント面積は20から25坪で開業します。この時考慮すべきことはスケーラビリティの重要性です。患者が増加したときの対応が柔軟にできなければ、売り上げのアッパー値への影響が出ることになります。将来的な成長を考慮し、チェアの増床余地やスムーズな導線設計をする必要があります。

魅力的な内装設計

「デザイン」は差別化の要素のうち、戦略的差別化の要素となり、容易に変えることができない要素になります。内装は患者が医院を選ぶ決め手の一つであり、居心地がいい内装設計をすることで患者満足度を高めることができます。
内装設計のポイントとして清潔感と安心感のあるデザイン設計を考慮することが大切です。長く使っていく医院を作る上で、床や壁の汚れが目立ちにくく、掃除を行いやすい材料を選定することで清潔感を保つことができます。また木目調の家具や間接照明を組み合わせることで安心感のあるデザインを作ることができます。
また打ち出すブランドによっても内装設計を変える必要があります。例えば小児歯科を強みにしていくのであれば、キッズスペースや口腔機能トレーニングを行うルーム、子供が来院しやすくなる内装や外壁などを行うことでブランドにあった医院を作ることができます。

効率的な採用戦略

人材確保において特に優先すべきなのは有資格者「歯科衛生士」の採用です。近年は特に採用競争は激しくなっています。

図.新卒歯科衛生士求人倍率の推移「歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告」(一般財団法人口腔保健協会)より船井総合研究所作成)

こちらは新卒歯科衛生士の有効求人倍率です。有効求人倍率とは 有効求人数 ÷ 有効求職者数で求めることができる数値です。1倍だと求人数と求職者数が同じ状況です。1倍を超えると求職者が求人数を超える「売り手市場」であると言えます。つまり2023年の21.8倍という数値は求職者一人に対して求人が22件ある状況を示しています。この数値からどれだけ歯科衛生士の求人が難しいのかがわかると思います。
つまり早期に採用計画を立て、休暇制度や福利厚生など働きやすい環境を当たり前に整え、チェア台数分の歯科衛生士を確保する必要があります。

内覧会の実施
歯科医院を急に開業したところで、地域住民の方々に認知されなければ患者さんはやってきません。そこで有効になるのが「内覧会の開催」です。内覧会を行うことで、地域住民への信頼獲得だけでなく、従業員同士のチームワークを高めることができます。また内覧会は開業後の3か月間の新規患者獲得につながり、医院経営を軌道に乗せることにも繋がります。
実施形態としては無料相談会や見学ツアー、お祭りの開催などがあります。DMを計画的に配布し、認知度を高めることが大切です。

まとめ

ここでは歯科医院の開業医がどれだけの年収になり、手取りがいくらぐらいの基準になるのか、開業の成功例と失敗例、そして開業する上で注意するポイントについてまとめました。先生が歯科医院を開業する上で参考の一つになれば幸いです。