【最新版】歯科医院の平均売上と売上向上の秘訣を解説

昨今、物価高騰、採用難、競争激化から多くの歯科医院が売上や利益に対して課題を感じています。
実際、「支出はあがる一方で、売上は伸び悩んでいる」という先生方が無料経営相談でこられることが多いです。
この記事では、統計データに基づき、歯科医院の平均売上・発生する支出・それに対しての対策について、解説いたします。

歯科医院の平均売上はいくら?

まず、自院の立ち位置を把握していただくため、統計データから歯科医院の売上を解説いたします。

歯科医院全体の平均売上

医療経済実態調査によると、歯科医院1施設あたりの年間売上は、2009年の4,701万円から2019年の7,333万円まで右肩上がりで上昇、2020年は7,326万円と微減になっています。

図.歯科診療所の平均医業収入の推移(「令第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)」(e-Stat 政府統計の総合窓口)より船井総合研究所作成)

個人事業主と医療法人に分けた際の平均売上

次に個人事業主と医療法人を分けた統計データです。
個人事業主の1施設あたりの売上は、2,009年が4,044万円、2020年が4,575万円と500万円増加したことに対し、医療法人は、2,009年が7,961万円、2020年が1億433万円と2,000万円以上増加しています。

図.個人事業主と医療法人の歯科診療所数の推移(「令和4年医療施設(動態)調査 全国編、第5表(報告書第5表) 歯科診療所数,年次・開設者別」(e-Stat 政府統計の総合窓口)より船井総合研究所作成)

また、歯科医院の総数は微減傾向にある一方で、医療法人は増加傾向にあります。
つまり、個人事業主の歯科医院が減少しているということです。
これは業界内での競争が、より組織的・大規模になっていることを示唆しています。

図.歯科診療所の開設数と廃止数の推移(「医療施設動態調査(令和7年2月末概数)」(厚生労働省)より船井総合研究所作成)

なぜ売上向上が必須であるのか

では次に、なぜ売上向上をする必要があるのかを外部環境の変化からお伝えいたします。

「長期インフレ時代」とそれに伴うコスト増

IMF(国際通貨基金)によると、これから5年間日本経済はインフレ率が2%になると推測しています。
これは、地政学リスク、物流費、不動産費、エネルギー費、原材料費、円安、人件費といった、あらゆるコストの上昇を意味します。
これまでと同じ経営の方法では、利益が圧迫され、最終的には閉院の危機に陥ってしまいます。

労働力人口減少に伴う採用難

皆さんもご存じの通り、日本の労働力人口は年々減少しており、歯科業界の人材確保は極めて困難になっています。特に歯科衛生士の有効求人倍率は23.3倍(2022年)に達し 、新卒歯科医師の給与も高騰を続けており、都内だと60万円を超える歯科医院も多々あります。
このような状況なので、人件費の増加は避けられません。

図.新卒歯科衛生士求人倍率の推移「歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告」(一般財団法人口腔保健協会)より船井総合研究所作成)

売上を向上させるためのマーケティングの3つの柱

これらの厳しい外部要因の変化に対応し、歯科医院を存続・持続的に成長するためには、「集患」「固定化」「単価UP」の3つの面から売上を向上させていく必要があります。

集患

集患は、大きく分けてWEBとオフラインの2つあり、特に重要なことはWEBの対策です。
WEBで最も大切なことは、MEO対策としてGoogleマップの口コミを増やすことです。
患者様が歯科医院を選ぶ基準として、Google上の口コミをとても重要視しているためです。
実際に、弊社のお付き合い先でも1か月間に50件のGoogle口コミを集めた結果、1か月の新患が30名増えたという事例もあります。
その他にも、即効性の高いGoogleの広告の運用で集患をしつつ、中長期的なSEO対策により、安定した集患を行っていく必要があります。
集患での目標は、チェア1台あたり8~10名です。

固定化

固定化とは、新規で来院された患者様に継続的にメンテナンスで来院していただくことを指します。継続的にメンテナンスに来院していただくためには、「患者教育」が必要です。
具体的には、初診と治療が終了した際にカウンセリングをすることが患者教育を行う上で重要になってきます。
初診時のカウンセリングは、歯科医院の理念・治療方針・キャンセルポリシーなどをしっかり伝え、患者様との信頼関係を築きます。また、「治療中断のリスク」を資料で具体的に表し 、治療途中での離脱を防ぎます。
初診カウンセリングを導入した結果、キャンセル率が15%から5%まで減少した事例もございます。
治療終了時のカウンセリングでは、メンテナンスの重要性をお伝えし、定期的に歯科医院に通っていただくことを促します。
固定化での目標は、初診から2回目のメンテナンス来院までの移行率を50%以上で、チェア1台あたりレセプト枚数が120枚です。

単価UP

単価UPには2つの方法があります。
1つ目が保険での単価UPです。
現状算定している点数が適切かどうかや口管強の施設要件を達成できるかどうかを確認し、単価UPをしていきます。
実際に、弊社のお付き合い先でもレセプト単価1,000点未満だった歯科医院が、算定漏れを確認した結果、レセプト単価1,300点になった事例もあります
保険での単価UPの目標は、レセプト単価が1,250点以上になることです。

2つ目が自費での単価UPです。
自費の売上を向上させるためには、周辺医院・原価率・患者様が選びやすい価格帯での商品設計、患者様が納得できるようなカウンセリング、主訴患者様に来院してもらうための専門サイト作成と広告運用が必要です。
まずは、どの歯科医院でも行っている補綴を強化していくことが良いでしょう。
補綴の対象者に対して、セラミックやジルコニアを選んでいただくための商品設計やカウンセリング体制を構築していくことで強化ができます。
自費での単価UPの目標は、保険売上が1,250点(レセプト単価)×120枚(レセプト枚数)×チェア台数を達成した際に、30%以上になることです。

まとめ

物価高騰や採用難により、歯科医院の売上向上は必須です。
売上を向上させなければ、利益が減少し、閉院の危機に陥る可能性もあります。
そこで、売上向上のためには、「集患」「固定化」「単価アップ」の3つの考え方を意識した経営が重要となります。

集患では、MEO対策としてGoogleマップの口コミを増やすことが来院のきっかけとして非常に重要です 。併せて、即効性のある広告運用と中長期的なSEO対策で安定した新患獲得を行っていきます。

固定化では、初診時と治療終了時のカウンセリングを通じた「患者教育」が鍵となります。治療を中断するリスクや、メンテナンスの重要性を丁寧に伝えることで、患者様との信頼関係を築き、継続来院を促します 。

単価アップでは、患者様が価値を納得できる自費の価格設計や質の高いカウンセリング、専門サイトを用いたマーケティングで自費率30%を目指します 。

これらの施策を一つ一つ行うことで、持続的な成長が実現できます。
まずは自院で着手しやすい項目から実践してみてはいかがでしょうか。