歯科業界における事業承継とM&A

2019年02月27日 (水)

コラムテーマ:
その他

皆様、こんにちは。

株式会社船井総合研究所医療支援部の谷口 竜都(タニグチ リュウト)と申します。
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
本日は、「歯科業界における事業承継とM&A」についてです。

このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。
「そろそろ、現役引退かな・・・」
「子どもは歯科医師ではないから、医院は閉めよう」
「何歳まで続けたらよいかな?」
「いつから、事業承継を考えた方が良いの?」
「子どもか勤務医に引き継がせようにも、スタッフがついていかないかもしれない・・・」

結論からお伝えします。
①ライフプランを早期から考え、5年、10年先を見据えて準備すべき
②廃院するコストは高い

事業をいつ、どのように終えるのか、それまでにどのような医院状態にしておくのか、そのために今は何をすべきかなど、自分自身のライフプランを描くのは、早ければ早いほど良いです。
そして、多くの方が選択する廃院ですが、意外にもコストが高くなります。
廃院以外にも売却という手法がありますが、売却額を高くするために収益性も大切な指標ですから、早め早めの準備が大切となります。

【歯科業界の現状】
厚生労働省の「平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」によれば、
現在日本の歯科医師数は104,533人、そのうち診療所で働いている歯科医師数は89,166人となっております(2016年3月31日)。
年齢別にみると、下記の通りです。
総数                         :89,166人            (100%)
29歳以下                :2,599人              (2.9%)
30~39歳               :14,468人            (16.2%)
40~49歳               :20,310人            (22.8%)
50~59歳               :24,049人            (27.0%)
60~69歳               :20,027人            (22.5%)
70歳以上                :7,713人              (8.7%)

平均年齢は52.9歳60歳以上が31.2%という状況であり、
結果、リタイアを検討している方が多く、また実際にリタイアされる方も増加しております。
歯科業界のリタイアは、事業承継か廃院かどちらかになります。

【事業承継とは】
事業承継とは、歯科医院の後継者に、事業を引き継ぐことを言います。
歯科業界の事業承継は、後継者が誰かにより3つに分類されます。
それぞれに、メリットデメリットがあります。

①親子間の承継
メリット:治療方針を引き継ぎやすい、売却後の将来トラブルリスクが低い
デメリット:子どもが歯科医師でないといけない、争族の可能性(相続、税金トラブル)
②勤務医への承継
メリット:治療方針を引き継ぎやすい、患者様やスタッフを引き継ぎやすい
デメリット:勤務医がいないといけない、売却額が少なくなる可能性、
③第三者への承継(売却、事業譲渡)
メリット:買手の対象に制限がない
デメリット:売却手続きや交渉が難しい

 

★歯科YouTube動画|事業承継のメリットデメリット

【M&Aとは】
診療所で働いている歯科医師数は89,166人、歯科診療所数は68,756施設数(平成30年3月31日)となっているため、多くの診療所には勤務医がいない状況です。また、子どもも歯科医師ではないとなると、多くの方々は廃院という道を選択します。
しかし、冒頭に述べたように廃院コストは高額です。
法手続き、医療機器や医療廃棄物の処分費用、建物の取り壊しや原状回復、従業員の退職金など様々なところに費用がかかります。

そこで、もう一つの選択肢が第三者への承継(売却)、M&A(エムアンドエー)です。
「Merger & Acquisition」の略で、「合併と買収」を意味します。
歯科業界では、まだ多くありませんが、今後認知されていき増えていくと考えております。
ご自分で売れないと判断される前に、是非ご相談ください。
(最下部に無料診断)

【M&Aのメリットデメリット】
M&Aには、売手側、買手側によってメリットデメリットがあります。

<売手のメリット>
①廃院コストを削減できる可能性がある
②資産を現金化できる(設備など)
③既存患者様を引き継げる可能性がある
④既存スタッフを引き継げる可能性がある

<売手のデメリット>
①M&A後のトラブル、損害賠償・買戻しなど

<買手のメリット>
①新規開業、分院展開のコストを軽減できる
②新規開業、分院展開のリスクを軽減できる(患者つきのため)
③新規開業、分院展開の採用リスクが軽減できる(スタッフつきのため)

<買手のデメリット>
①M&Aの手続きや交渉の難易度が高い
②設備が古い可能性が高い

【M&Aの売却金額】
売手側も買手側も気になるのは、その金額です。
当然、売手の歯科医院のキャッシュフローによりますが、
概ね2,000万~3,000万円ほどになるようです。
(※それ以上高くても、買手が少ないようです)

価格決定にあたり、3つの要因があります。
①収益性
まず、条件として赤字ではないことが挙げられます。
赤字の場合は、無償譲渡を覚悟した方が良いです。
利益が出ているのか、将来も利益が見込めるのか、このあたりが収益性の要因です。

②財産価値
これは医院にある設備、土地、建物、患者数、借入金、などが当てはまります。

③売手買手の事情
そして、売手買手の事情です。早く売りたい場合、早く買いたい場合は、価格を下げる場合もあります。

【事業承継とM&Aの流れ】
親子間・勤務医への事業承継、第三者への承継の流れですが、
まずは現状ヒアリングから行います。
売手だけではなく、買手も同様にヒアリングからスタートします。
無料相談を設けているケースが多いので、まずはそちらをご活用ください。

<事業承継>
①現状ヒアリング
②医院の現状分析
③承継スケジュール
④承継後サポート

<売手>
①現状ヒアリング
②医院分析
③買手調査
④交渉

<買手>
①現状・条件ヒアリング
②売手調査
③DD(医院の価値調査)
④交渉
⑤PMI(M&A成立後の価値向上のこと)

【事業承継とM&Aの相談先】
事業承継やM&Aのご相談ですが、既にお付き合いのある顧問税理士さんやメーカー、材料卸会社へのご相談が最も多いようです。ただし、事業承継やM&Aのご経験がある方は多くはいません。そうなると、外部への依頼となりますが、国が全国に設置した「事業承継・引継ぎ支援センター」という公的機関と、M&Aアドバイザーや経営コンサルタントなどの専門家がいます。どちらにも良し悪しありますので、ニーズに合った会社をご選択ください。

<相談先>
①顧問税理士
②メーカー、材料卸会社
③事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)
④M&Aアドバイザー、経営コンサルタント

【まとめ】
以上、大まかではありますが、歯科業界における事業承継につき、記載させていただきました。事業承継やM&Aは大切なライフプランの一つであり、早い準備が成功のカギです。少しでも気になった方は、無料相談をご利用ください。

こちら「1分でできる企業価値カンタン算定」です。無料ですので、是非ご活用ください。

(出典)
厚生労働省「医療施設動態調査(平成30年3月末概数)」
厚生労働省「平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」

最後までお読みいただきありがとうございました。

谷口 竜都(タニグチ リュウト)

歯科医院の為の成長戦略ロードマップ~1

歯科医院のための成長戦略ロードマップ~2

歯科医院の為の成長戦略ロードマップ~3

◾️この記事を書いたコンサルタント

谷口 竜都

プロフィール詳細

中央大学法学部法律学科を卒業し、新卒で船井総合研究所入社。歯科医院の経営コンサルティングを専門とする。現在は、歯科、動物病院分野のコンサルティング部門の統括、および中国の歯科医院コンサルティングの立ち上げ、医療ビッグデータに関する新規事業開発のプロジェクトを行っている。

【社外コラム】
あきばれ歯科経営 online

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【執筆】
事例から実践を学ぶ歯科医院の成長戦略バイブル(医歯薬出版株式会社)


【コンサルティング実績 ※一部】
事医療法人隆歩会 あゆみ歯科クリニック様
医療法人 中央歯科医院様
医療法人社団仁宏会 じんデンタルクリニック様様
医療法人社団MMT 長浦マリン歯科様
医療法人Pleasure きまた歯科様
もじり歯科クリニック様

◾️監修コンサルタント

歯科・治療院・エステ支援部
マネージングディレクター

松谷 直樹

2000年株式会社船井総合研究所入社。2004年より歯科コンサルティングに携わる。
開業クリニックから日本有数規模の医療法人グループまでコンサルティングを行っている。コンサルティングのモットーは患者様が「この医院を選んでよかった」と思っていただけるような歯科医院づくり。長期にわたるコンサルティング契約先が多く、15年以上契約している歯科医院もある。
歯科医師会、各種スタディグループ、各種歯科企業での講演実績多数。ビジネス雑誌プレジデント誌における歯科特集への寄稿、デンタルダイヤモンド誌での連載実績、クオキャリア、Ciメディカル、FEED等の各種歯科企業発行機関紙への寄稿実績あり。

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