【2023年版】歯科業界動向および時流予測

2023年02月10日 (金)

コラムテーマ:
時流予測

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近年、歯科業界を取り巻く環境は大きく変化しています。
その中で経営者としてどのような考えをもつべきか、悩まれる方も多くいらっしゃるかと思います。

今回は歯科業界を取り巻く現状と課題、経営者が今後もつべき視点について詳しく解説いたします。

歯科業界におけるマクロ環境の現状と6つの課題

2022年は激動の一年とも呼べる、大きく外部環境・マクロ環境が変化した一年でした。地政学リスクや資源の高騰・物流問題など、経営環境にも大きく影響をもたらす変化があったかと思います。

特に、2023年以降に見据えるべきマクロ環境の変化と課題は以下の6つです。

1.人口減少と労働力人口の減少(生産年齢人口の激減)
2.少子高齢化の加速
3.経営者の高齢化
4.世界情勢は不安定に、インフレ・不景気への懸念(利上げ・リストラの続出)
5.Z世代の台頭・キャリア観の変化
6.女性活躍への対応

それぞれの現状と課題について、詳しく解説いたします。

人口減少と労働力人口の減少(生産年齢人口の激減)

総務省統計局によると、現在の日本の総人口は12年連続で減少しており、減少幅は11年連続で拡大しています。そして、生産年齢人口は1995年をピークに減少し続けており、日本国内全体で人材不足が懸念されています。
歯科業界を経営するうえで必要になってくるのが、歯科衛生士や歯科助手といった人材です。
現在、歯科衛生士は、1人に対し20もの歯科医院が求人募集を出すほど人材が枯渇しています。
また、この歯科衛生士の不足により、歯科助手が担う業務の負担が大きくなるケースがあります。
その影響で、歯科助手も離職する人が増えているという現状があります。
今後ますます人材の確保が大きな課題となると考えられます。

少子高齢化の加速

内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、令和3年10月時点での日本の高齢化率(総人口における65歳以上の人口の割合)は28.9%となっており、その割合は毎年増加傾向にあります。
それに伴って、歯科医院に通う患者も高齢化が進んでいます。
そのため歯科業界としては、高齢者に対する治療方法の充実化を図ることが重要になってまいります。たとえば、う蝕処置だけではなく義歯や訪問歯科といった時流に沿った治療内容も取り入れていく必要があると考えられます。

経営者の高齢化

厚生労働省によると、令和2年12月時点で全歯科医師の平均年齢は52.4歳となっています。
また、帝国データバンクの医療機関の休廃業・解散動向調査によると、令和4年時点で歯科医院を経営する代表者の年齢は、約6割が60歳以上と高齢化が進んでいます。このことから、自院の後継者に悩む経営者の方が増加していると言えるでしょう。その中で承継・売却・廃業のどの選択肢を取るのかの意思決定、準備と対策が重要となります。

世界情勢は不安定に、インフレ・不景気への懸念(利上げ・リストラの続出)

近年、ロシアのウクライナ侵攻による物価上昇などの地政学的問題が、世界情勢を目まぐるしく変化させています。
これは歯科業界にも多大な影響を及ぼしています。
例えば、金銀パラジウム合金(以下:金パラ)の価格高騰です。パラジウムという資源は、ロシアが世界の生産量の4割を占めていました。そのため、今回のロシアによる軍事侵攻が原因となって金パラの価格は高騰してしまいました。歯の補綴において使用される機会が多い金パラの価格高騰は、歯科業界に大きな打撃を及ぼしていると言えるでしょう。
このような状況の中でいかに利益率・生産性の高い診療部門を強化していくかが課題となってきます。

Z世代の台頭・キャリア観の変化

Z世代(10代〜20代)と呼ばれる世代の台頭により、キャリア観に変化が起こっています。
このZ世代は、キャリアに対して「ひとつの会社に依存しない・働きやすさを重視する」傾向があると言われています。
にも関わらず、他院と差別化をする目的で休日診療や夜間診療を行う歯科医院が増加しています。
これによる労働者への負担の増大が、Z世代のキャリア観との相違を招くと言えます。人材の流動性が高まる中でいかにして働き方改革などで人材定着率を上げていくかが課題となります。

女性活躍への対応

歯科業界に欠かせない人材として歯科衛生士が挙げられます。
実は、歯科衛生士の99%は女性なのです。このことから、歯科業界は出産や育児による離職の影響も受けやすいと言えます。そのため、女性が活躍しやすい環境づくりが必要になってくるでしょう。

この6つの課題について、これから5年~10年をかけて、
歯科医院経営者の皆様も対応していく必要が迫られると考えております。

その中でも今後10年を見据えた際に、経営における競争の主戦場は人材獲得競争になることは簡単に想像がつくことでもあります。そのため、現在雇用しているスタッフの育成や定着、キャリア支援や産休・育休への対応などについては早く想定し自院にて落とし込んでいく医院が先行していくと思われます。

これからの歯科医院経営者が持つべき視点

前述した「少子化」「人材獲得競争」「人材定着」については、いずれも資本力を持った医院が優位に働くテーマばかりです。つまり、大型化された利益安定性の高い医院程、来るべく人材獲得競争・人材定着を優位に進めていくことが想定されます。
条件・環境の良い医院にスタッフが定着し、条件・環境の良い医院にスタッフの応募が殺到することでしょう。

こうした環境の見通しの中で、歯科医院経営者はどのように備えていくべきか。
それは「大型化」「利益安定化」の2つについて、経営努力を通じて目指していく必要が出てきます。良質な経営と生産性の向上を果たしてこそ、「人材獲得競争」「人材定着」を優位に進めていくことが可能です。

良い治療、良い診療運営をしていれば、経営が良くなる…

こうしたシンプルなことだけでは人材獲得競争に太刀打ちできないことも想定されます。今後、経営はより高度化し、経営領域についての改革・改善をどの程度できるかが問われるようになります。

皆様の歯科医院経営においても、上記の視点を持っていただければと思います。

もっと詳しくお知りになられたい方向けに業界時流予測をまとめた無料ダウンロードレポートも公開させていただいております。

是非ご活用ください。

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◾️この記事を書いたコンサルタント

出口 清

プロフィール詳細

法政大学経営学部経営戦略学科卒業。
在学中は「ランチェスター戦略・マーケティングリサーチ」などを専攻。
入社以降、医療・歯科業界を中心として"マネジメント×採用"といったテーマを得意としている。
モットーは「PLに見える人財採用」

◾️監修コンサルタント

歯科・治療院・エステ支援部
マネージングディレクター

松谷 直樹

2000年株式会社船井総合研究所入社。2004年より歯科コンサルティングに携わる。
開業クリニックから日本有数規模の医療法人グループまでコンサルティングを行っている。コンサルティングのモットーは患者様が「この医院を選んでよかった」と思っていただけるような歯科医院づくり。長期にわたるコンサルティング契約先が多く、15年以上契約している歯科医院もある。
歯科医師会、各種スタディグループ、各種歯科企業での講演実績多数。ビジネス雑誌プレジデント誌における歯科特集への寄稿、デンタルダイヤモンド誌での連載実績、クオキャリア、Ciメディカル、FEED等の各種歯科企業発行機関紙への寄稿実績あり。

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