【速報】令和6年度歯科診療報酬改定 補綴関連の動向

2024年03月01日 (金)

コラムテーマ:
診療報酬改定・保険改正

令和6年度の診療報酬改定にて

補綴関連の点数改定や見直される項目が発表されたので整理しつつ、その後の動向を考察してまいりたいと思います。

まず、歯冠修復補綴に関連する項目の点数改定をピックアップいたします。

「Ⅰ-1 ④歯科医療における初再診料等の評価の見直し」という章から引用すると、
—-以下、引用—-
2.歯冠修復及び欠損補綴物の製作に係る項目の評価を引き上げる。
 【支台築造(1歯につき)】
 1 間接法
  イ メタルコアを用いた場合
   (1) 大臼歯 181点(+5)
   (2) 小臼歯及び前歯 155点(+5)
  ロ ファイバーポストを用いた場合
(1) 大臼歯 211点(+15)
(2) 小臼歯及び前歯 180点(+10)
【金属歯冠修復(1個につき)】
1 インレー
イ 単純なもの 192点(+2)
ロ 複雑なもの 287点(+3)
2 4分の3冠(前歯) 372点(+2)
3 5分の4冠(小臼歯) 312点(+2)
4 全部金属冠(小臼歯及び大臼歯) 459点(+5)
【根面被覆(1歯につき)】
1 根面板によるもの 195点(+5)
【高強度硬質レジンブリッジ(1装置につき)】2,800点(+200)
【有床義歯】
1 局部義歯(1床につき)
イ 1歯から4歯まで 624点(+30)
ロ 5歯から8歯まで 767点(+35)
ハ 9歯から11歯まで 1,042点(+70)
ニ 12歯から14歯まで 1,502点(+100)
2 総義歯(1顎につき) 2,420点(+236)
 【鋳造鉤(1個につき)】
 1 双子鉤 260点(+5)
 2 二腕鉤 240点(+5)
 【線鉤(1個につき)】

双子鉤 227点(+3)
 2 二腕鉤(レストつき) 159点(+3)
 3 レストのないもの 134点(+2)
 【コンビネーション鉤(1個につき)】246点(+10)
 【磁性アタッチメント(1個につき)】
 2 キーパー付き根面板を用いる場合 550点(+200)

合わせて「Ⅲ-6 ⑮歯科固有の技術の評価の見直し」という章から引用すると、
—-以下、引用—-
7.歯冠補綴物及び欠損補綴物の製作にあたり、ICT の活用を含め歯科医師と歯科技工士が連携して色調採得等を行った場合の評価を新設する。
【印象採得】
[算定要件]
注1 1について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、区分番号M011に掲げるレジン前装金属冠、区分番号M011-2に掲げるレジン前装チタン冠又は区分番号M015-2に掲げるCAD/CAM冠を製作することを目的として、前歯部の印象採得を行うに当たって、歯科医師が歯科技工士とともに対面で色調採得及び口腔内の確認等を行い、当該補綴物の製作に活用した場合には、歯科技工士連携加算1として、5 0 点を所定点数に加算する。ただし、同時に2以上の補綴物の製作を目的とした印象採得を行った場合であっても、歯科技工士連携加算1は1回として算定する。
2 1について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、区分番号M011に掲げるレジン前装金属冠、区分番号M011-2に掲げるレジン前装チタン冠又は区分番号M015-2に掲げるCAD/CAM冠を製作することを目的として、前歯部の印象採得を行うに当たって、歯科医師が歯科技工士とともに情報通信機器を用いて色調採得及び口腔内の確認等を行い、当該補綴物の製作に活用した場合には、歯科技工士連携加算2として、7 0 点を所定点数に加算する。ただし、同時に2以上の補綴物の製作を目的とした印象採得を行った場合であっても、歯科技工士連携加算2は1回として算定する。
3 注1に規定する加算を算定した場合には、当該補綴物について、注2に規定する加算並びに区分番号M006に掲げる咬合採得の注1及び注2並びに区分番号M007に掲げる仮床試適の注1及び注2に規定する歯科技工士連携加算1及び歯科技工士連携加算2は別に算定できない。
4 注2に規定する加算を算定した場合には、当該補綴物について、注1に規定する加算並びに区分番号M006に掲げる咬合採得の注1及び注2並びに区分番号M007に掲げる仮床試適の注1及び注2に規定する歯科技工士連携加算1及び歯科技工士連携加算2は別に算定できない。
5 (略)
【咬合採得】
[算定要件]
注1 2のイ(2)並びにロ(2)及び(3)について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、ブリッジ又は有床義歯を製作することを目的として、咬合採得を行うに当たって、歯科医師が歯科技工士とともに対面で咬合状態の確認等を行い、当該補綴物の製作に活用した場合には、歯科技工士連携加算1として、5 0 点を所定点数に加算する。
2 2のイ(2)及びロ(2)(3)について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、ブリッジ又は有床義歯を製作することを目的として、咬合採得を行うに当たって、歯科医師が歯科技工士とともに情報通信機器を用いて咬合状態の確認等を行い、当該補綴物の製作に活用した場合には、歯科技工士連携加算2として、7 0 点を所定点数に加算する。
3 注1に規定する加算を算定した場合には、当該補綴物について、注2に規定する加算並びに区分番号M003に掲げる印象採得の注1及び注2並びに区分番号M007に掲げる仮床試適の注1及び注2に規定する歯科技工士連携加算1及び歯科技工士連携加算2は別に算定できない。
4 注2に規定する加算を算定した場合には、当該補綴物について、注1に規定する加算並びに区分番号M003に掲げる印象採得の注1及び注2並びに区分番号M007に掲げる仮床試適の注1及び注2に規定する歯科技工士連携加算1及び歯科技工士連携加算2は別に算定できない。
5 (略)
【仮床試適】
[算定要件]
注1 2及び3について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、有床義歯等を製作することを目的として、仮床試適を行うに当たって、歯科医師が歯科技工士とともに対面で床の適合状況の確認等を行い、当該補綴物の製作に活用した場合には、歯科技工士連携加算1として、5 0 点を所定点数に加算する。
2 2及び3について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、有床義歯等を製作することを目的として、仮床試適を行うに当たって、歯科医師が歯科技工士とともに情報通信機器を用いて床の適合状況の確認等を行い、当該補綴物の製作に活用した場合には、歯科技工士連携加算2として、7 0 点を所定点数に加算する。
3 注1に規定する加算を算定した場合には、当該補綴物について、注2に規定する加算並びに区分番号M003に掲げる印象採得の注1及び注2並びに区分番号M006に掲げる咬合採得の注1及び注2に規定する歯科技工士連携加算1及び歯科技工士連携加算2は別に算定できない。
4 注2に規定する加算を算定した場合には、当該補綴物について、注1に規定する加算並びに区分番号M003に掲げる印象採得の注1及び注2並びに区分番号M006に掲げる咬合採得の注1及び注2に規定する歯科技工士連携加算1及び歯科技工士連携加算2は別に算定できない。
5 (略)
【印象採得】
[施設基準]
一の二の二 印象採得、咬合採得及び仮床試適の歯科技工士連携加算1及び歯科技工士連携加算2の施設基準
(1)歯科技工士連携加算1の施設基準
歯科技工士を配置していること又は他の歯科技工所との連携が確保されていること。
(2)歯科技工士連携加算2の施設基準
イ 歯科技工士を配置していること又は他の歯科技工所との連携が確保されていること。
ロ 情報通信機器を用いた歯科診療を行うにつき十分な体制が整備されていること。
※ 咬合採得及び仮床試適についても同様。

8.大臼歯CADCAM冠について、要件を見直す。
【CAD/CAM冠(1歯につき)】
[算定要件]
(1) (略)
(2) CAD/CAM冠は以下のいずれかに該当する場合に算定する。
イ 前歯又は小臼歯に使用する場合
ロ 大臼歯にCAD/CAM冠用材料( (ⅤⅤ)を使用する場合
ハ 第一大臼歯又は第二大臼歯にCAD/CAM冠用材料(Ⅲ)を使用する場合
なお、ハの場合は、当該CAD/CAM冠を装着する部位の対側に大臼歯による咬合支持(固定性ブリッジ又は乳歯(後継永久歯が先天性に欠如している乳歯を含む。)による咬合支持を含む。以下、咬合支持という。)がある患者であって、以下のいずれかに該当する場合をいう。
① 当該CAD/CAM冠を装着する部位と同側に大臼歯による咬合支持があり、当該補綴部位に過度な咬合圧が加わらない場合等
② 当該CAD/CAM冠を装着する部位の同側に大臼歯による咬合支持がなく、当該補綴部位の対合歯が欠損(部分床義歯を装着している場合を含む。)であり、当該補綴部位の近心側隣在歯までの咬合支持がある場合
【装着】
[算定要件]
(6)「注1」の内面処理加算1とは、CAD/CAM冠、CAD/CAMインレー又は高強度硬質レジンブリッジを装着する際に、歯質に対する接着力を向上させるために行うアルミナ・サンドブラスト処理及びプライマー処理等をいう。なお、当該処理に係る保険医療材料等の費用は、所定点数に含まれる。
(7) (略)
(8)「注1」の内面処理加算1又は「注2」の内面処理加算2を算定する場合は、接着性レジンセメントを用いて装着すること。

9.クラウン・ブリッジ維持管理料について、対象となる歯冠補綴物を見直す。
【クラウン・ブリッジ維持管理料(1装置につき)】
[算定要件]
注1 クラウン・ブリッジ維持管理料を保険医療機関単位で算定する旨を地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、歯冠補綴物(区分番号M010の2に掲げる4分の3冠(前歯)、区分番号M010の3に掲げる5分の4冠(小臼歯)、区分番号M010の4に掲げる全部金属冠(小臼歯及び大臼歯)及び区分番号M011に掲げるレジン前装金属冠を除く。)又はブリッジを製作し、当該補綴物を装着した患者に対して、当該維持管理の内容に係る情報を文書により提供した場合に算定する。

13.医療技術評価分科会における検討結果を踏まえ、医療技術の評価及び再評価を行い、優先的に保険導入すべきとされ た新規技術の保険導入及び既存技術の診療報酬上の評価を行う。
[診療報酬改定において対応する優先度が高い技術のうち、学会等から医療技術評価分科会に提案があったものの例 ]
(3)ブリッジの支台装置としての第二小臼歯レジン前装冠
(4)CADCAMインレー修復に対する光学印象法

14.口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進及び臨床の実態等の観点から、既存技術の評価の見直しを行う。
[評価の見直しを行う技術の例 ]
(7)レジン前装金属冠

とございまして、総じて点数の増加になるようです。
これは、歯科医療従事者の賃金上昇および歯科技工所への外注費用の上昇を鑑みたり誘導しているものと捉えていくべき内容であり、他項目の点数増加も含めて大局観でみた時に、医院の収益性向上に直結するというよりは、固定費である人件費や変動費である技工料にあてるキャッシュフローを増やして人手不足解消や技工物の調整も含めた非効率コストの削減による間接的な収益性向上を目論むべきであろう流れでしょう。

保険診療での歯冠修復補綴の動向とは

先に引用いたしました各項目の総じての点数増加と共に着目すべきは、
・大臼歯CADCAM冠の適用拡大
・クラウン・ブリッジ維持管理料の適用縮小
・CADCAMインレーの光学印象法の保険適用
・レジン前装金属冠の点数減少
ではないでしょうか。

これらの内容から明確にいえるのは『脱金属』ともいえる金銀パラジウム合金の回避と言っても過言ではないであろうCADCAM冠への誘導です。

クラウン・ブリッジ維持管理料の適用範囲の見直しにおいては、
・4分の3冠(前⻭の単冠)
・5分の4冠(⼩⾅⻭の単冠)
・全部鋳造冠(⼩⾅⻭、⼤⾅⻭の単冠)
・レジン前装⾦属冠(単冠)
が対象外になるということで、診療内容を一切変えずに本診療報酬改定の施行前後を比較するとセットする本数×100点の減少があるかもしれないとすると、とても大きな変化と言えます。

その代わりに新設される「技工士連携加算」を活用していくことを踏まえたCADCAM冠の適用こそが、収益性を向上させる打開策になるのでしょう。

診療現場での具体的な流れや判断については、施設基準も含めた詳細の要件が明示されてから当社主催のセミナー等で情報提供していきたいと考えております(最下部にセミナー情報あり)が、動向(流れ)からみると、光学印象を用いたクラウンやインレーの印象採得が主流になってくることから派生する石膏模型レスの保険診療や非金属の歯科治療となっていくことが明確なのではないでしょうか。
しかしながら、光学印象装置を未導入な医院が導入を検討する契機になるとは考えにくく、既にインビザラインを多く取り扱っているためにiTero導入済であったり、欠損補綴としてインプラント手術を多く施している医院がトリオス導入済であったりする場合において、保険診療でも有効活用できるであろうという程度にとどまっている印象ですね。

脱金属によるCADCAM冠主流時代の経営戦略とは

本診療報酬改定を踏まえた将来的な動向に合わせた戦略を考えていくにあたっては、2点を土台として現場のコーディネートをしていくこととなるでしょう。
1.CADCAM冠を適用するにあたっての調整量減少を追求すること
これは、チェアタイム削減による収益性向上だけではなく、対応するスタッフの働きやすさにも直結するポイントです。そしてその要素要因としては外注している歯科技工所だけの問題ではなく、形成や印象採得にて改善できることもあろうことから、いかに合理的に問題解決に取り組めるかという経営者としても歯科医師としても手腕が問われることとなります。
2.CADCAM冠セット後のプラーク付着に着目した予防意識の向上をはかること
この問題は何年にも渡り、しっかりと診ている歯科衛生士の中では叫ばれ続けていることです。そして、材料が進化を続けることによって改善されていくものなのかもしれません。が、実態を踏まえたうえでのリスクヘッジを患者に対してどのくらい伝え理解し行動に繋げてもらえるかという点が重要となるでしょう。要は、CADCAM冠をセットした患者は徹底した予防メンテナンス習慣を実践してもらうべきですし、選択肢を検討する段階で予防的治療の一手としてジルコニアやオールセラミックを選んでもらうということになります。

上記の通り、点数の増減だけ良し悪しを議論したり、単一材料の特徴だけを分析しても歯科医院経営には大きく活かしていくことはできません。時流を追って理解し適応していくことこそが収益性を高めてサスティナブルな歯科診療を実現できるとすると、速報をチェックして対策や施策を講じていきたいということになります。

既に船井総研では、今年度の診療報酬改定を題材とし、しかるべき時流適応を発信していきたいと考えております。
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5月12日14時30分~17時30分
<場所>
船井総合研究所 東京本社 (東京ミッドタウン八重洲内)

診療報酬改定にまつわるコラムを随時更新中

https://dental.funaisoken.co.jp/category/revision-of-medical-fees/

その他の診療報酬改定のコラムは下記よりご覧ください。

 

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