2025年歯科業界 欠損補綴治療市場予測:勝ち残るための戦略とは?:詳細解説
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本コラムをお読みいただきありがとうございます。
船井総合研究所の歯科コンサルタント、長瀬亘亮です。
はじめに
歯科業界は、まさに転換期を迎えています。 1960年代の「虫歯の洪水時代」、2010年代の「インプラントバブル時代」を経て、現在は人口減少、高齢化、そして予防歯科の普及といった新たな局面に直面しています。 特に、欠損補綴治療市場は大きな変化の渦中にあります。
今回のコラムでは、船井総合研究所が独自に調査したデータや、厚生労働省のデータをもとに、2025年の歯科業界、特に欠損補綴治療市場における「勝ち残るための戦略」について、より具体的に解説していきます。
業界トレンドの詳細解説
近年の歯科業界では、以下の変化が顕著に現れています。
1. 人口減少と高齢化の進展
- 日本の人口は減少傾向にあり、高齢化社会が加速しています。 これは、歯科医療を必要とする人口の減少、そして高齢者特有の口腔問題への対応の必要性が高まっていることを意味します。
- 厚生労働省の「令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要」によると、20本以上の歯を有する者の割合は年々増加しており、特に高齢者層において顕著な増加が見られます。 これは、国民の健康意識の高まりと予防歯科の普及による成果と考えられます。
2. 予防歯科の普及
- 8020運動(80歳になっても20本以上の歯を残そうという運動)の成果や、国民の健康意識の高まりにより、予防歯科の重要性が広く認識されるようになりました。
- その結果、う蝕や歯周病の発症率は低下し、結果として欠損歯数も減少傾向にあります。
- 厚生労働省のデータによると、1人平均DMF歯数(DMFT指数)は年々減少しており、予防歯科の効果が数字として現れています。
3. インプラント治療の普及と競争激化
- インプラント治療は、欠損補綴治療の選択肢として広く普及してきました。
- 一方で、インプラント治療を提供する歯科医院も増加しており、患者獲得競争が激化しています。
- 全国の歯科診療所の約36%にあたる24,438施設がインプラント治療を実施しており、競争の激化は避けられない状況です。
- Googleトレンドのデータによると、「インプラント」の検索数は2010年をピークに、2015年頃から横ばい傾向にあります。 これは、インプラント治療のニーズは依然として高いものの、市場が成熟期に差し掛かり、新規患者獲得が難しくなっていることを示唆しています。
- また、「オールオン4」といった、より専門性の高いインプラント治療の検索数も近年増加傾向にあり、患者ニーズの多様化と高度化が進んでいることが分かります。
2025年の市場予測: 3つの要因による供給過多
上記の業界トレンドを踏まえ、2025年の欠損補綴治療市場は、以下の3つの要因が重なり合うことで、「供給過多」の状態に突入すると予測されます。
- インプラント治療を提供する歯科医院の増加: インプラント治療の技術習得が進むにつれ、提供する歯科医院は増加の一途をたどっています。
- 日本の人口減少: 人口減少は、歯科医療を必要とする人口の減少に直結します。
- 欠損歯数の減少: 予防歯科の普及により、将来的に欠損歯数はさらに減少すると予想されます。
需給バランスが逆転するということは、「患者が歯科医院を選ぶ時代」に突入することを意味します。 すなわち、歯科医院は、患者に選ばれるための魅力を高め、差別化を図っていくことが求められるのです。
2025年に勝ち残るための戦略
2025年の厳しい競争環境を勝ち抜くためには、以下の戦略が重要となります。
1. 差別化戦略: 2つの選択肢
差別化戦略とは、他の歯科医院との違いを明確にし、「選ばれる理由」を創り出す戦略です。 欠損補綴治療においては、以下の2つの戦略が考えられます。
(1) コストリーダーシップ戦略
- 概要: 地域の中で最も低価格な治療費を設定することで、価格に敏感な患者層を獲得する戦略です。 特に、新規参入の歯科医院や、まだ欠損補綴治療に力を入れていない歯科医院にとって、取り組みやすい戦略といえます。
- メリット:
- ターゲットを広く取ることができるため、患者獲得の機会が広がります。
- 明確な訴求ポイントがあるため、Webサイトや広告、院内パンフレットなどで打ち出しやすいです。
- 課題:
- 一人当たり売上が減少するため、材料費が高騰している現在においては薄利となってしまう可能性があります。
- 金銭的余裕のない方の来院も増加してしまい、営業損失になってしまうケースも発生する可能性があります。
(2) 差別化集中戦略
- 概要: 特定の診療分野に特化し、専門性を高めることで、質の高い治療を求める患者層を獲得する戦略です。 すでに欠損補綴治療に注力している歯科医院や、特定の分野で高い技術力を持つ歯科医師がいる場合に有効です。
- メリット:
- 認定資格、症例数などの社会的証明を打ち出すことで、参入障壁が高く競合が増加しにくいというメリットがあります。
- 求めてくる患者自体も比較検討したうえで来院するため、成約率が上がる傾向にあります。
- 上記のメリットにより、営業損失が減少し、時間当たり生産性が高まりやすいです。
- ニッチな治療や技術を訴求していくため、遠方からもそれを求めて患者が来院するというメリットもあります。
- 課題:
- 理事長や院長指名での来院希望もあり、スケールしづらくなる可能性があります。
- 難症例やセカンドオピニオンでの来院も増加してしまい、カウンセリング難易度が上がるという課題もあります。
2. 患者ニーズに対応した診療体制
患者ニーズが多様化している現代において、「患者に寄り添った診療体制」を構築することが重要です。 具体的には、以下のような取り組みが求められます。
(1) 多様な治療オプションの提供
- インプラントだけでなく、ブリッジ、義歯など、患者さんの状況や希望に合わせた多様な治療オプションを提供できるようにしましょう。
- 各治療法のメリット・デメリットを丁寧に説明し、患者さんが納得した上で治療法を選択できる環境を提供することが大切です。
- 特に、保険適応治療と自費治療の選択肢を提示し、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく説明することで、患者さんの納得度を高めることができます。
(2) 口腔機能管理の重視
- ただ歯を補うだけでなく、「口腔機能の回復・維持」を目的とした治療を提供することが重要です。
- 2024年の診療報酬改定で口腔機能管理の重要性が高まっていることも踏まえ、この分野に力を入れていくことで、患者満足度向上と長期的な安定収益確保に繋げることが可能になります。
- 具体的には、「口腔機能低下症」や「口腔機能発達不全症」の検査・指導・管理を積極的に行い、患者さんの口腔機能の維持・向上に貢献していくことが重要です。
(3) 丁寧なカウンセリング
- 患者さんの不安や疑問を解消し、納得して治療を受けていただけるよう、十分な時間を取って丁寧なカウンセリングを行いましょう。
- 特に、高額な自費治療となるインプラント治療では、患者さんの信頼獲得が不可欠です。
- カウンセリングでは、患者さんの生活習慣や価値観、将来的な希望などを丁寧にヒアリングし、それぞれのニーズに合わせた治療計画を提案することが重要です。
3. 効果的なマーケティング戦略: 2つの視点
「適切な患者に、適切な情報を届ける」ための戦略が重要となります。具体的には、以下の2つのポイントを意識しましょう。
(1) Webマーケティングの活用
- 従来の検索広告から、潜在層へのアプローチへ: 従来の検索広告は、すでに治療の必要性を感じている顕在層へのアプローチとしては有効でしたが、競争が激化し、費用対効果が低下しています。 そこで、これから重要になるのが、まだ治療の必要性を感じていない潜在層へのアプローチです。
- SNS広告、動画広告の活用: YouTube、Instagram、Facebook、X(旧Twitter)、TikTokなどのSNS広告や動画広告を活用することで、潜在層へ医院の認知を広げ、治療の必要性を感じてもらうことが重要になります。
- ペルソナ設定: 効果的なWebマーケティングを行うためには、ターゲットとなる患者層のペルソナ(年齢、性別、居住地、職業、家族構成、趣味、悩みなど)を明確化し、それぞれのペルソナに合わせた訴求を行う必要があります。
- カスタマージャーニーマップの作成: 患者が歯科医院と接点を持つ場面(Webサイト閲覧、広告接触、電話問い合わせ、来院、カウンセリング、治療、メンテナンスなど)を可視化し、それぞれの段階でどのような情報提供やコミュニケーションが必要かを検討することで、より効果的なマーケティング戦略を立案することができます。
(2) 院内マーケティングの強化
- 既存患者からの紹介促進: 既存患者さんからの紹介は、新規患者獲得の最も効果的な方法の一つです。 患者満足度を高めるための取り組みを徹底し、積極的に紹介を依頼することで、紹介による新規患者獲得を増やすことができます。
- 定期的なメンテナンスの促進: 定期的なメンテナンスは、患者さんの口腔内環境を良好に保つだけでなく、医院との継続的な関係を築く上で重要です。 リコール率向上のための仕組み作りや、メンテナンスの重要性を患者さんに理解してもらうための啓蒙活動などが重要となります。
- 口腔機能管理による自費治療への提案: 保険診療のメンテナンスを通じて、患者さんの口腔機能の状態を定期的に評価し、必要に応じて自費の義歯やインプラント治療を提案することで、収益向上を図ることができます。 口腔機能管理の重要性を患者さんに理解してもらうことで、自費治療への抵抗感を減らし、成約率向上につなげることが可能になります。
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まとめ
日本の歯科業界では、予防歯科の普及や高齢化により欠損補綴治療は減少傾向にあり、歯科医院は診療科目の差別化や患者への個別対応力強化が求められています。
船井総合研究所は、豊富な実績とノウハウで、貴院の成長をサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
◾️この記事を書いたコンサルタント
長瀬 亘亮
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