【視察レポート】韓国の最先端歯科企業事例

2024年06月17日 (月)

コラムテーマ:
成功事例報告 時流予測

いつもお世話になっております。
船井総合研究所の伊藤崇でございます。

この度、韓国にあります
・MINISH(ミニッシュ)社(歯科病院運営企業)
へ、海外視察ツアーを開催しましたので、
実際に訪問同行しました弊社トップコンサルタントの視点をまとめ、
ご案内いたします。

■韓国の歯科業界

韓国では、2023年に「歯周病」で外来診療を受けた患者数は約1,880万人に達し、
この数値は、風邪(約1,660万人)を抜き、外来多頻度傷病統計の1位となりました。
また、医療美容ツーリズムの増加から、美容医療を含め独自の発展を遂げています。

■MINISH社の概要

ソウル特別市江南区に自社ビル(14階建)にて診療を行う総合歯科医院であり、
韓国国内には約40店舗の自社オリジナル治療である
“ミニッシュべニア”を取り扱う関連医院があります。

非公表ながら、年商規模は約80億円と想定される、
韓国国内No.1の歯科医院です。

その特徴は自社開発(歯科専門メーカーと共同開発)した材料と器材を用いた
“ミニッシュべニア”という審美診療があり、韓国の有名人が多数施術を受けており、
その実績から患者の約15%は訪韓観光客です。

■MINISH社の現地講演内容サマリー

カン・ジョンホ代表院長は、
2009年にミニッシュ歯科病院を開院し診療をスタートさせました。
それまで行っていた従来の審美診療で用いられるラミネートべニアに対して、
その切削による健康面のデメリットを懸念し
「これでは自身の家族にも安心して施すことができない」
という代表の想いから、
今の主力商品である“ミニッシュべニア”を開発し、
2015年に商標登録を行いました。

2018年に現在のビルへ移転し、
診療の幅を広げることで総合病院へ昇格し、
より幅広い診療と高い品質の歯科医療サービスを提供する、
韓国国内No.1歯科クリニックになりました。
(韓国の保険医療制度上、医療機関の規模や診療レベルで格付けがされ、そのレベルによって患者自己負担割合が変わる等の影響があります)

カン・ジョンホ代表院長が掲げる患者への健康デメリットを最小限にする治療を審美的ニーズに最大限生かすために、
1日で治療が終わる仕組みを実現しました。

それは、1棟のビル内に歯科診療スペースと施術に用いる歯科技工物の製作スペースを同居させ、
カウンセリング~事前施術~技工物製作~本施術という一連の工程を全て各フロアで行い、
患者は事前施術までを午前中に受診することで、
当日の夕方には本施術を受診できるような仕組みを構築されました。
これを実現するために、14階のビルに移転したのでした。

実現のために苦労したのは、
施術技術だけなく技工物の製作能力を高めることが重要で、
特に素材が重要とのことでした。

具体的には、
従来のラミネートべニアよりも極薄に仕上げることを目指したため、
材料が高く丈夫なだけではなく柔軟性を持たせないといけないという点です。

そして、1日で施術が完了させられることは、
患者の私生活への影響を最小限にするとともに、
韓国に訪れた訪韓観光客の方々から大きな支持を得られたとのこと。
また、この治療は自社で10年の保証も担保し、
安心して施術を受けられる体制を構築されました。

■MINISH社の視察サマリー

ミニッシュ社のクリニックビルを見学した際に大きな特徴として見られたのは、
そのマーケティングの上手さです。

ビル1棟を占有していることからガラス張りの外壁には大きく目立つサインがあります。
これは商業テナントに入るクリニックでは他テナントとの兼ね合いで実現できないことから、
大きな液晶モニターも活用して大きな広告効果を持たせていると言えます。

いざ中に入ると、審美歯科治療を主力商品にしているだけあり、
清潔感とライティングに拘ったエントランススペースが広がります。
自社開発しているケア商品の陳列にも規模感を感じさせ、
医療機関ではなくサロンに訪れたような感覚にさせるような演出がなされていることが分かります。

また、施術を担当する歯科医師をブランディングする仕掛けも美しくなされ、
担当医によって施術費用が段階的に違う仕組みを活かしています。
(ランク内訳は不明)


ミニッシュ社のマーケティングを語るうえで重要なのが施術を受けた有名人が多く露出していることです。
韓国の文化背景も相まって、その施術を受けたこと自体がステータスともなるような掲載で、一般人の審美的欲求を叶えると共にそこに安心感を持たせる工夫をしていることが分かります。


■視察担当コンサルタント解説

ミニッシュ社の特徴を捉えた際、
第一印象としては有名人を掲載するマーケティングの上手さが際立ってしまうと思います。

しかし、その土台には約10年かけて未だに進化を続けている自社開発の治療(技術と材料の両側面)があり、
その背景がカン・ジョンホ代表院長の理念から派生したものだということに本視察を通じて理解が深まりました。

ミニッシュべニアが生み出される以前のラミネートべニア治療は日本国内でも古くから用いられる手法でしたが、
健康な歯を削るという側面から近年多くの歯科医師は積極的なアピールをしないものと化し、その症例数は増えていないと言えます。
そのため、弊社のクライアント様でも年間に数症例も行っていない実態があります。

しかし、日本国内では歯科矯正がより一般的に広がり、
そのマーケティングニーズも増え続けていることから、
矯正治療の市場規模が年々拡大しておりますが、
もしミニッシュべニアが日本国内でも取り扱われて認知されるようになると、
日本の審美的治療における市場動向に大きな変化を及ぼす可能性があるのでは?
と期待しています。

ミニッシュ社の発展は、
韓国国内の医療保険制度や国民性も相まってのものと言えますが、
1つの企業として理念から独自サービスを生み出し、
それが潜在的欲求に深く訴求できて外国人患者に対してもサービス提供できているという事実は、
中堅規模のサービス業種が日本を出てグローバルに活躍する可能性を示しているともとれるため、大きな成功事例として良い見本であると言えます。

~~~~~~~~~~~

こちらをお読みの先生のご評価はいかがでしょうか?

「ミニッシュべニアは、アライナー矯正に続く次の時流になるか?」

この点について、今後も動向を注視してまいります。
最後までお読みいただき、
ありがとうございます。

◾️この記事を書いたコンサルタント

伊藤 崇

プロフィール詳細

大手歯科メーカーでの営業、レセプトコンピューターメーカーでのマーケティング責任者を経て、
船井総合研究所へ入社。
長年の豊富な現場経験と、大学院で学んだ経営学修士の知識から、集患・定着・単価アップのノウハウを提供するだけでなく、組織マネジメントからノウハウ定着までのご支援を行う。
訪問歯科拡大と外来強化だけでなく、経営者と従業員との人間関係を円滑にすることで全体最適化を図り、経営者のビジョンと理念経営を叶えるコンサルタント。

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