令和6年度(2024年)歯科診療報酬改定におけるか強診から口管強への変更点について~診療報酬改定の項目詳細の読みとき⑩~

2024年03月18日 (月)

コラムテーマ:
診療報酬改定・保険改正

船井総合研究所の眞野でございます。
 
いつもメルマガやコラムをお読みいただき誠にありがとうございます。
 
本コラムでは、令和6年度(2024年度)の診療報酬改定にて発表されました、か強診(かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所)から口腔管理体制強化加算(口管強)の変更について、詳しく解説いたします。

か強診は撤廃されるのか?

まず、フレーズだけが先行してしまっていると思われる「か強診の廃止撤廃」に関しては、要件と名称が変更となることで、実質的には存在し続けるとご理解いただきたいと思います。
 
その名称は、口腔管理体制強化加算(口管強)となります。“加算”とつく施設基準の名称から内容を把握できていないと誤解を生みかねないですね。
 
「か強診が無くなる」と聞くと「ハシゴ外しか」と早合点されてしまいそうですが、よくよく内容を解釈していきますと、これまでにか強診という施設基準で求められてきた歯科医院としての在り方はしっかりと踏襲されつつも、新たに持ち合わせてほしいというメッセージ性の強い要件があることで、施設としての機能を再定義されるといったものとなります。
 
詳しくは、その要件とともに、解説していきます。

施設基準『口腔管理体制強化加算(口管強)』の要件とは?

(1)歯科医師が複数名配置されていること又は歯科医師及び歯科衛生士がそれぞれ1名以上配置されていること。
 
(2)次のいずれにも該当すること。
ア.過去1年間に歯周病安定期治療又は歯周病重症化予防治療をあわせて30回以上算定していること。
イ.過去1年間にエナメル質初期う蝕管理料又は根面う蝕管理料をあわせて12回以上算定していること。
ウ.歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準を届け出ていること。
エ.歯科訪問診療料の注15に規定する届出を行っているこ
 
(3)過去1年間に歯科疾患管理料(口腔機能発達不全症又は口腔機能低下症の管理を行う場合に限る。)、歯科衛生実地指料口腔機能指導加算、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料又は歯科口腔リハビリテーション料3をあわせて12回以上算定していること。
 
(4)以下のいずれかに該当すること。
ア.過去1年間の歯科訪問診療1、歯科訪問診療2又は歯科訪問診療3の算定回数があわせて5回以上であること。
イ.連携する在宅療養支援歯科診療所1、在宅療養支援歯科診療所2若しくは在宅療養支援歯科病院に依頼した歯科訪問診療の回数があわせて5回以上であること。
ウ.連携する歯科訪問診療を行う別の医療機関や地域の在宅医療の相談窓口とあらかじめ協議し、歯科訪問診療に係る十分な体制が確保されていること。
 
(5)過去1年間の診療情報提供料又は診療情報等連携共有料があわせて5回以上算定している実績があること。
 
(6)当該医療機関に、歯科疾患の重症化予防に資する継続管理(エナメル質初期う蝕管理、根面う蝕管理及び口腔機能の管理を含むものであること。)、高齢者並びに小児の心身の特性及び緊急時対応に関する適切な研修を修了した歯科医師が1名以上在籍していること。なお、既に受講した研修が要件の一部を満たしている場合には、不足する要件を補足する研修を受講することでも差し支えない。
 
(7)診療における偶発症等緊急時に円滑な対応ができるよう、別の保険医療機関との事前の連携体制が確保されていること。ただし、医科歯科併設の診療所にあっては、当該保険医療機関の医科診療科との連携体制が確保されている場合は、この限りではない。
 
(8)当該診療所において歯科訪問診療を行う患者に対し、迅速に歯科訪問診療が可能な歯科医師をあらかじめ指定するとともに、当該担当医名、診療可能日、緊急時の注意事項等について、事前に患者又は家族に対して説明の上、文書により提供していること。
 
(9)(5)に掲げる歯科医師が、以下の項目のうち、3つ以上に該当すること。
ア.過去1年間に、居宅療養管理指導を提供した実績があること。
イ.地域ケア会議に年1回以上出席していること。
ウ.介護認定審査会の委員の経験を有すること。
エ.年1回以上、在宅医療に関するサービス担当者会議や病院・診療所・介護保険施設等が開催する多職種連携に係る会議等に年1回以上出席していること。
オ.過去1年間に、在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料を算定した実績があること。
カ.在宅医療又は介護に関する研修を受講していること。
キ.過去1年間に、退院時共同指導料1、在宅歯科医療連携加算1、在宅歯科医療連携加算2、在宅歯科医療情報連携加算、小児在宅歯科医療連携加算1、小児在宅歯科医療連携加算2、退院前在宅療養指導管理料、在宅患者連携指導料又は在宅患者緊急時等カンファレンス料を算定した実績があること。
ク.認知症対応力向上研修等、認知症に関する研修を受講していること。
ケ.過去1年間に福祉型障害児入所施設、医療型障害児入所施設、介護老人福祉施設又は介護老人保健施設における定期的な歯科健診に協力していること。
コ.自治体が実施する事業(ケに該当するものを除く。)に協力していること。
サ.学校歯科医等に就任していること。
シ.過去1年間に、歯科診療特別対応加算1、歯科診療特別対応加算2又は歯科診療特別対応加算3を算定した実績があること。
 
(10)歯科用吸引装置により、歯科ユニット毎に歯の切削や義歯の調整、歯冠補綴物の調整時等に飛散する細やかな物質を吸引できる環境を確保していること。
 
(11) 患者にとって安心で安全な歯科医療環境の提供を行うにつき次の十分な装置・器具等を有していること。
ア.自動体外式除細動器(AED)
イ.経皮的動脈血酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)
ウ.酸素供給装置
エ.血圧計
オ.救急蘇生セット
カ.歯科用吸引装置
 
なお、自動体外式除細動器(AED)については保有していることがわかる院内掲示を行っていることが望ましい。」

口管強とか強診の差とは?

項目が多くて混乱してしまいそうですが、理解しやすいよう、これまでのか強診で求められていた要件と口管強で求められていく要件の差に着目していきたいと思います。
 
その差とも言える部分に関しては、(3)(4)(6)の3項目でしょう。
 
まず(3)に関しては、口腔機能管理に関連する算定を所定回数行っていることと、というものです。この内容は今回の変更の一番の重要ポイントであり、今後の歯科医院の位置づけとして高齢者の口腔機能の低下をフォローしていくと共に小児の発達発育における口腔周りの発達不全をサポートしていくことが明言されたということです。細々と記載されている算定項目の名称は新設される『歯科口腔リハビリテーション料3』などの処置料であり、まだその内容が把握できていない方は別コラムをご参照いただければと思います。
 
次に(4)ですが、これは訪問診療の実施回数が必須要件ではなくなったと言っても過言ではありません。“いずれかに該当すること”とうたわれて、5回の訪問診療を行うこと以外にも訪問診療を行える体制が整備されていることでも要件を満たせるようになったわけです。体制整備の後、具体的にいかにして訪問診療の依頼を受けていくのかは追って明らかになるとは思いますが、これまで患者やケアマネージャーからの診療の依頼自体を得られなかった歯科医院であっても本内容を満たすことで(4)がクリアできるということは、当該施設基準の実質的なハードル引き下げと捉えていくべきでしょう。
 
3つ目は(6)の研修や講習会の受講を求めるもので、その内容としては歯科疾患の重症化予防や口腔機能の管理に対しての最新知識を得られるものなので、当該施設基準に関連性の高いものですし、早々に該当する研修や講習会の情報が各主催から発信されると想定されます。

シンか強診とも言える“口腔管理体制強化加算” (口管強)の施設基準との向き合い方とは?

総じて、新たに設定されるこの施設基準は、必ず取得すべく申請を行うべきでしょう。強く推奨する理由としては、1つがこれまでのか強診の申請に対して大きなネックとなっていた訪問診療の実施が必須要件ではなく代替えできることで全ての項目を満たせる可能性が高まったことです。2つ目が当該施設基準を申請していることで経営面の恩恵がやはり少なくないということです。
 
算定できる加算もあれば、P重防の算定頻度の制限緩和などあり、より患者に対して最適化した処置が実施できるだけではなく収益性も高められると言えるからです。

今回は、か強診改め口腔管理体制強化加算(口管強)の要件を解説致しました。
 
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