皆様
いつもお世話になっております。
株式会社船井総合研究所、歯科支援部マネージャーの 山本 喜久でございます。
お忙しいところ、本コラムをご開封いただき、誠にありがとうございます。
1月23日、厚生労働省(中医協)発表の資料において、「CAD/CAM冠・インレーの適用拡大及び評価の見直し」に関する具体的な改定案が示されました。
これは、今年度の診療報酬改定における、メタルフリー治療の標準化とデジタル化の加速を決定づける最重要指針となるものです。
■ 中央社会保険医療協議会(中医協)令和8年1月23日
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001639439.pdf
この「メタルフリー×デジタル」という巨大な時代の潮流をいち早く捉え、貴院の成長戦略に活かすために、今回の改定の真の意義と今後の対応検討について、徹底的に深掘りします。
CAD/CAM冠・インレーの「大臼歯解禁」がもたらす業界変動
今回の改定案で最も注目すべき点は、CAD/CAM冠およびCAD/CAMインレーの適応範囲が実質的に大幅拡大されたことです。
これまで、大臼歯へのCAD/CAM適用には「上下顎両側の第二大臼歯が全て残存していること」など、厳しい咬合支持の条件が壁となっていました。
しかし、今回の改定案では、この条件が緩和・見直しされています。
大臼歯適用の要件緩和
従来は厳しい咬合支持要件がありましたが、
今回の案では
「当該部位の同側に大臼歯による咬合支持がある場合」
「同側に支持がなくとも、対合歯が欠損(義歯含む)であり、近心隣在歯までの支持がある場合」
など、臨床実態に即した柔軟な適用が可能になる方向性が示されました。
CAD/CAMインレーの大臼歯本格導入
これまで小臼歯が主戦場だったCAD/CAMインレーについても、大臼歯への適用条件が明記されました。
この変更は、歯科医療に以下のような革命的な変化をもたらす可能性があります。
①保険診療における「銀歯」の激減
適用要件の緩和により、これまで「銀歯か、自費のセラミックか」の二択を迫られていた多くのケースで、保険の白い歯(CAD/CAM)が第一選択肢となり得ます。メタルを用いた補綴物を患者様が選択する機会は、今後極端に減っていくでしょう。
②「素材の違い」を伝える説明力の重要化
メタルという選択肢が消えゆく中で、患者様は「保険の白い歯(CAD/CAM)」と「自費の白い歯(セラミック)」の狭間で迷うことになります。だからこそ、チェアサイドにおいて、CAD/CAMとセラミックの素材特性、耐久性、審美性の決定的な違いを明確に伝え、患者様が納得して最良の選択ができるよう導く必要性が、より鮮明になります。
つまり、今回の改定は、患者様にとって「経済的な負担を抑えつつ、白い歯を手に入れる」ことを当たり前にし、歯科医療機関にとっては「メタルフリー治療への完全移行」を決断する、まさに歴史的な転換点と言えるでしょう。
国が推進するデジタルシフトとチーム医療の評価
中医協の資料が今回、CAD/CAM冠等の要件緩和と共に、光学印象(IOS)や歯科技工士連携への評価を厚くした背景には、国が推進する以下の国家戦略レベルの目的が色濃く反映されています。
今回の資料では、光学印象(スキャン)の対象が拡大され、これまでインレーに限られていた光学印象が、CAD/CAM冠にも適用拡大される方向であると読み取れます。
歯科技工士との連携評価「歯科技工士連携加算」として、対面あるいはICT(情報通信機器)を用いて歯科技工士と連携・相談した場合の評価が新設・拡充されています。
①歯科医療のデジタルシフト(DX)の完遂
国は、従来のアナログな印象採得から、IOSを用いたデジタル印象への移行を強力に後押ししています。光学印象の点数が整備され、対象が広がることは、「デジタル化に対応できない医院は評価されない」時代への突入を意味します。
②チーム医療による質の担保
単に白い歯を入れるだけでなく、適合精度や色調において、歯科医師と歯科技工士が密に連携することを「価値」として認めています。これは、デジタルデータを介した専門職同士のコミュニケーションこそが、これからの補綴治療の質を担保する鍵であるというメッセージです。
歯科医院が今、踏み出すべき「3つのアクション」

では、今後どんな目線でこの改定を見守るべきなのか?
経営の判断基軸として重要な、will(やりたい診療)、can(得意な診療)、must(求められる診療)の3軸のバランス。今回の改定は、未来の「must」を形成する無視できない大きな流れです。
IOS(口腔内スキャナー)への投資は「待ったなし」
CAD/CAM冠への光学印象適用は、IOS導入の障壁を極限まで下げました。もはやIOSは「自費診療のための道具」ではなく、「保険診療の標準インフラ」になりつつあります。
この投資をためらうことは、医院の生産性と競争力を自ら削ぐことに等しいと言えます。
技工所との「デジタル連携」の強化
算定要件には、歯科技工士との連携(対面またはICT)が盛り込まれています。
データを送るだけの関係ではなく、デジタルツールを用いてリアルタイムに情報を共有し、補綴物の精度を高め合うパートナーシップの構築が、貴院の臨床レベルを一段階引き上げます。
メタル依存の収益構造からの脱却
金パラだけでなく、シルバーの価格高騰リスクや供給不安を考慮すれば、国がCAD/CAMを推進するのは必然です。
貴院においても、メタル依存の収益構造から脱却し、デジタル技術を駆使したメタルフリー診療を中心とした経営体質へ転換することが、最も確実なリスクヘッジとなります。
結びに代えて:デジタルとメタルフリーが描く未来
デジタル化の「本格的な幕開け」に乗り遅れないためにも、今回のCAD/CAM冠・インレーの適用拡大および周辺技術の評価見直しは、日本の歯科医療における「メタルフリー化」と「デジタル化」の融合が完成形に近づいたことを理解し対応する必要があります。
今後は、単に「白い歯が入る」というだけでなく、光学印象による不快感の少ない型取り、デジタル設計による高精度な適合、そして技工士との密な連携による審美性の追求など、デジタルを前提とした患者体験(UX)の向上が、医院選びの決定的な要因となっていくでしょう。
前述の通り、メタルを用いた補綴物を患者様が選択することは極端に減っていきます。
その一方で、「白ければ何でも良い」わけではありません。チェアサイドでCAD/CAMとセラミック素材の違いを明確に伝え、患者様一人ひとりの口腔内環境やライフスタイルに合わせた最適な「白い歯」を提案できるかどうかが、患者満足度と医院の信頼を分ける大きな分岐点となります。
また、算定要件に盛り込まれた施設基準や連携の要件は、国が求める歯科医療機関の在り方を明確に示しています。デジタル化に積極的に取り組み、基準を満たす医院様と、そうでない医院様との間で、提供できる医療の選択肢と患者満足度に決定的な差を生み出す可能性があります。
この大きな時代のうねりの中で、最新の技術と制度をいち早く貴院の成長に取り込み、患者様へ最高の「白い歯」と「快適な治療」を提供できる体制を整えることが、これからの医院経営における唯一無二の成長戦略になると確信しております。
今回の診療報酬改定を読み解き発信していくことで、ますますの業界発展ならびに、ご来院いただく患者様の“健口=健康”を延伸し、歯科医療の未来図を共に描き出す礎になれればと存じます。





