「留意事項通知」は“経営の実行計画書”だ。2026年診療報酬改定を利益に変える、院内システム構築術

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執筆者出口 清
コラムテーマ診療報酬改定・保険改正・制度対応
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2026年度(令和8年度)診療報酬改定の「留意事項通知」が発出され、改定の全貌が詳細なルールと共に明らかになりました。多くの経営者様が、この膨大な資料を前に、何から手をつけるべきか、頭を悩ませているかもしれません。

しかし、この留意事項通知は、単なる「守るべきルールのリスト」ではありません。これは、国の求める医療の方向性を示し、それに沿った医院が評価されるための「経営の実行計画書」そのものです。本コラムでは、船井総研の専門コンサルタントが、この通知を読み解き、改定を確実に「医院の利益」へと転換するための、3つの院内システム構築術を提言します。

1.「算定ルールのシステム化」:スタッフの“勘”に頼らない、算定漏れ防止体制の構築

今回の改定でも、新設・変更された算定項目は多岐にわたります。特に、歯周病治療体系の見直しや、各種管理料の要件変更は、日々のカルテ入力やレセプト請求業務に直接影響します。

「このケースは算定できるはず」「いつもこうしているから大丈夫」といった、スタッフ個々の経験や勘に頼った運用は、算定漏れによる機会損失や、返戻・査定による収益悪化のリスクを増大させます。今こそ、属人的な業務フローから脱却し、「誰がやっても正しく算定できる仕組み」を構築すべき時です。

《経営者が今すぐ着手すべきこと》

  • 院内版「算定マニュアル」の作成・更新:変更点をまとめた資料を配布するだけでなく、自院で頻度の高い症例ごとに「算定項目チェックリスト」や「カルテ記載例」を作成し、電子カルテのテンプレートに組み込む。
  • レセプトチェックのダブルチェック体制の確立:院長だけでなく、経験豊富なスタッフや外部の専門家も交え、多角的な視点でレセプトをチェックする体制を構築し、ミスを未然に防ぐ。

2.「患者説明のシステム化」:TC・衛生士が主役の、カウンセリング体制の標準化

留意事項通知は、各種治療や管理料における「患者への情報提供・説明」の重要性を、改めて示唆しています。丁寧な説明は、患者満足度を高めるだけでなく、保険適用・自費診療の選択肢を提示する上で、意図せぬ「治療拒否」やトラブルを回避する生命線となります。

多忙な院長一人の口頭説明だけに依存するのではなく、トリートメントコーディネーター(TC)や歯科衛生士が、それぞれの専門性を活かして説明を分担する。そして、その説明の質を医院全体で標準化(システム化)することが、「歯科クリニック経営」の安定化に不可欠です。

《経営者が今すぐ着手すべきこと》

  • 説明用ツールの“共通言語”化:各治療法のメリット・デメリット、費用、期間をまとめた説明用シートや動画コンテンツを整備し、医院の「共通言語」として、誰でも同じレベルの説明ができるようにする。
  • 役割分担に応じたトークスクリプトの整備:「初診カウンセリングはTC」「歯周病治療の重要性は衛生士」など、役割に応じた基本的なトークスクリプトを用意し、スタッフの心理的負担を軽減しつつ、説明の質を担保する。

3.「連携フローのシステム化」:紹介を創出する、地域連携の仕組みづくり

今回の改定でも、医科歯科連携や多職種連携の評価は、重要な柱の一つです。留意事項通知には、情報提供文書の様式や、連携における具体的な要件が細かく定められています。

これらのルールは、裏を返せば、連携先(医科クリニック、病院、ケアマネジャー等)とスムーズに情報共有するための「共通フォーマット」が示された、ということです。このフォーマットに沿った連携フローを院内にシステムとして確立することが、「紹介したい・紹介しやすい歯科医院」としてのポジションを築く第一歩となります。

《経営者が今すぐ着手すべきこと》

  • 連携先への情報提供セットの作成:自院の紹介パンフレット、診療情報提供書のフォーマット、連携可能なメニュー一覧などをセットにし、近隣の連携候補先へ定期的に情報提供を行う。
  • 院内の紹介患者対応フローの確立:紹介患者様専用の予約枠の確保や、紹介元への迅速な経過報告フローなどを院内でルール化し、「紹介して終わり」にしない、信頼関係を構築する。

診療報酬改定は、3ヶ月ごとにやってくる「通信簿」のようなものです。留意事項通知という“実行計画書”を基に、院内の仕組みを一つひとつ見直し、改善し続ける医院だけが、継続的に良い成績を収めることができるのです。

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執筆者 : 出口 清

法政大学経営学部経営戦略学科卒、2016年に船井総合研究所に入社。 住宅不動産・医療業界などのコンサルティングを経験し、現在は歯科医院に特化したコンサルティングを従事している。 担当クライアントには県トップの規模のクライアントも複数担当、スタートアップ~大型化までのオールレンジのコンサルティングに対応している。得意としているテーマは“高利益化・生産性アップ・営業利益率アップ”であり、数々の医院のPLをV字回復させてきた。コンサルティングのモットーには“正しい利益の作り方&正しい利益の使い方”をおいている。