2026年度の診療報酬改定で新設された「ベースアップ評価料(ベア評価料)」。先日、その施設基準について「賃上げ計画が未届でも、2.3%以上の賃上げ実績があれば算定可能」という柔軟な運用が示され、多くの歯科医院経営者様が、申請すべきか、また、どう対応すべきか検討されていることでしょう。
しかし、この制度を単に「賃上げ分のコストを補填する仕組み」と捉えるのは、非常にもったいないと言えます。本コラムでは、船井総研の専門コンサルタントが、この「ベア評価料」を、歯科衛生士や助手の採用難を乗り越え、医院を成長させるための“戦略的投資”へと転換する3つの発想を提言します。
発想の転換1:「コスト」から「採用・定着への投資」へ
歯科業界は、歯科衛生士をはじめとする専門スタッフの採用競争が激化の一途をたどっています。このような状況下で、賃金は、求職者が医院を選ぶ際の最も分かりやすい指標の一つです。
「ベア評価料」の活用は、単なる既存スタッフへの賃上げに留まりません。これを原資として、地域の給与水準を上回る待遇を提示できれば、それは他院に対する強力な採用上のアドバンテージとなります。賃上げは「コスト」ではなく、優秀な人材を確保し、定着させるための「投資」である、という発想の転換が、これからの「歯科クリニック 経営」には不可欠です。
《経営者が今すぐ着手すべきこと》
- 近隣エリアの求人情報の給与調査:競合医院がどのような給与条件を提示しているか具体的に調査し、自院が競争力のある水準を提示できているか客観的に評価する。
- 求人票のキャッチコピーの見直し:「ベア評価料算定クリニック」「スタッフの待遇改善に積極的です」など、賃上げへの取り組みを具体的に求人票に記載し、求職者へアピールする。
発想の転換2:「補填」から「生産性向上の原資」へ
「ベア評価料」による増収分だけで、継続的な賃上げのすべてを賄うことは現実的ではありません。重要なのは、賃上げに見合うだけの「生産性向上」を、医院全体で達成することです。
例えば、最新の口腔内スキャナーを導入して技工にかかる時間とコストを削減したり、Web予約・問診システムで受付業務を効率化したりする。そこで生まれた利益を、さらなる賃上げや新たな設備投資の原資とする。この「生産性向上→利益創出→人・設備への再投資」という好循環を生み出すことが、「歯科 経営」を安定させる王道です。
《経営者が今すぐ着手すべきこと》
- 院内業務の「ムダ・ムラ・ムリ」の洗い出し:スタッフミーティングなどを通じて、日々の業務の中で非効率な点や、特定のスタッフに負担が偏っている作業を洗い出し、改善策をチームで検討する。
- 費用対効果の高いデジタル投資の検討:比較的手軽に導入でき、費用対効果の高いWeb予約システムやキャッシュレス決済などから、デジタル化の第一歩を踏み出す。
発想の転換3:「内部努力」から「外部へのアピール」へ
スタッフの待遇改善に努めているという事実は、採用活動だけでなく、患者さんに対する強力なPRメッセージにもなり得ます。
「当院は、スタッフが働きやすい環境を整えることで、質の高い医療サービスを提供しています」――。このメッセージは、患者さんに「この医院なら安心して任せられる」という信頼感を与えます。スタッフの満足度が高い職場は、自然と患者さんへの対応も丁寧になり、結果として、保険適用の範囲や自費診療の選択肢に関する説明もスムーズになります。これは、意図せぬ「治療拒否」といったトラブルを未然に防ぐ、何よりの対策と言えるでしょう。
《経営者が今すぐ着手すべきこと》
- Webサイトや院内掲示での情報発信:スタッフの集合写真や、働きがいについて語るスタッフの声を掲載するなど、「人の魅力」が伝わるコンテンツで、医院の良好な雰囲気をアピールする。
- 患者さん向け説明ツールの見直し:治療計画や費用について、患者さんが疑問や不安を感じないよう、分かりやすく、丁寧な説明ツールが整備されているか、改めて見直す。
「ベア評価料」は、単なる制度対応のタスクではありません。医院の未来を創る「人」に投資し、組織を強くするための、またとない機会なのです。
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