「採用コスト高騰時代」を生き抜くための組織デザイン

2021年06月15日 (火)

コラムテーマ:
マネジメント(採用 教育)

皆さま、こんにちは。
船井総合研究所の坂下です。

本日は、採用コスト高騰時代を生き抜くための組織デザインというテーマを記載させていただきます。
組織デザインというと、大きなテーマになってしまいますが、現実的な部分として、歯科衛生士の給与設計や昇給について検討していただく材料にしていただければ、と思います。

昨今、歯科衛生士の採用活動において、採用コストが高くなっていると感じる方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。縁故やハローワークからの採用が主体であった時代は遥か昔、求人ポータルサイトからの採用や専門学校からの採用が主力であった時代も過ぎつつあり、求人の多くは人材紹介会社経由にならざるを得ないといった状態に変わりつつあります。人材紹介会社を経由しての採用を行う場合、成功報酬として、おおよそ年収の20%程度の支払いが相場となっておりますので、地域差もありますが、月給24~26万円ほどと考えると、1名採用するための採用コストが70万円~80万円ほどになります。それに加えて、即戦力として働ける保証はないため、教育期間が必要であり、そのあたりも考慮すると、1名採用するためには100万円近くの費用がかかります。さらに、歯科衛生士が1名欠員状態である際の売上に対する影響を考慮すると、1ヵ月あたり100万円近くの損失が生まれます。

採用コストを抑えるために、人材紹介会社を経由しない形の採用戦略を考えるという議題も重要になりますが、今回のお話は脇に置かせていただきます。
上記のように、採用コストや欠員期間の売上減を考えると、従業員が定着する組織デザインの設計が必要不可欠であることがご理解いただけるかと思います。

では、何が必要なのか。答えは複数ありますが、今回のお話では、その1つの解として、「給与」と「昇給」を挙げさせていただきます。

従業員が退職を考える理由にはいくつかあります。
■人間関係
■給与や賞与、昇給などの金銭面
■労働時間や福利厚生などの労務環境
■仕事へのやりがいやキャリア形成
■結婚や出産に伴う環境の変化

各医院にて、それぞれの退職要因をなくす工夫は必要になりますが、2021年に入り、顕著に表れた傾向が「給与などの金銭面」による退職のように感じます。

コロナ禍による将来への不安からくる“貯蓄志向の高まり“が要因と考えられますが、そういった中で、紹介会社やポータルサイトを見ると、給与相場も高く、中途採用で30万円近くの求人を見かけたりします。そうすると、自身の待遇に不満を持ち、退職を考えるというケースが増加しております。

ここで検討が必要なことは、給与を30万円に変えて募集をかけることではなく、数年先も含めて考えた際に、“転職ではなく継続する方がよい“と選択させることです。
具体的にいうと、25万円で採用したスタッフについて、毎年の昇給が5,000円だとすると、昇給以外の給与を上げる要素がない場合、11年目時点にてようやく30万円になるということです。先述したように求人市場では、相場は25万円~26万円ほどですが、30万円近くの求人もありますので、自院だと10年務めてようやく到達、という迷いにつながります。それを防ぐために、昇給ルールを明確にする必要があります。

このことから、シンプルな答えは“昇給を1万円以上にするべき”ということです。

歯科衛生士の平均的な勤続年数はおおよそ6年ですので、その段階で30万円以上に設計することで給与に対する不満という理由だけでは退職に至るリスクは抑えられます。

一律に昇給を1万円とせず、別の昇給ルールを設計することや年数制限を設けることも必要ですが、今回の提案の本質として、30万円を誰もが超えられる設計になっているか、というところです。

もちろん退職の要因は給与だけではないため、それだけでは解消になりませんが、1つの要因を潰す方策としてご検討いただければ幸いです。また、本質的にこれからの時代に求められることは患者満足度(CS)の向上と並行して従業員満足度(ES)の向上ですので、小手先のテクニックではなく、従業員が働きやすい環境づくりを各医院で模索することは必須事項となります。

採用コストの高騰を考慮するのであれば、既存スタッフに投資・還元する方向性でご検討いただくことがよいのではないでしょうか。

【執筆者:船井総合研究所 坂下大樹】

◾️この記事を書いたコンサルタント

坂下 大樹

プロフィール詳細

船井総研入社後、呉服業、クリーニング業、家事代行業といった女性が活躍する業界
でのコンサルティング業務に従事し、女性マネジメントの研究を行う。
現在は、歯科医院のコンサルティングに従事し、歯科衛生士採用のコンサルティング
をメインテーマとする。全国の歯科衛生士学校をまわり、学校現場のリアルな声を反
映させた採用ソリューションには定評がある。
また、業界未経験の歯科助手の教育やモチベーションが上がる組織作りを得意とし、
全国の歯科医院に笑顔を届けている。

◾️監修コンサルタント

歯科・治療院・エステ支援部
マネージングディレクター

松谷 直樹

2000年株式会社船井総合研究所入社。2004年より歯科コンサルティングに携わる。
開業クリニックから日本有数規模の医療法人グループまでコンサルティングを行っている。コンサルティングのモットーは患者様が「この医院を選んでよかった」と思っていただけるような歯科医院づくり。長期にわたるコンサルティング契約先が多く、15年以上契約している歯科医院もある。
歯科医師会、各種スタディグループ、各種歯科企業での講演実績多数。ビジネス雑誌プレジデント誌における歯科特集への寄稿、デンタルダイヤモンド誌での連載実績、クオキャリア、Ciメディカル、FEED等の各種歯科企業発行機関紙への寄稿実績あり。

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